やまいぬは書かねばと思った

お久しぶりです。

久しぶりにブログを更新しよう、と眠れない日曜から月曜へと日付が変わったベッドの中で思い立った。

 

そう、眠れない。

 

眠いんだけど。

 

眠れない。ちっとも。

 

頭の中がうごうごと蠢いている。

 

ごうごうと、まるで台風のように。

 

ベッドの中、暗い部屋、じっと嵐が過ぎるのを待ってはみたが、激しさを増すばかり。

 

このままでは濁流に飲み込まれてしまう。

 

だから、書かねばならぬ。やまいぬは久しぶりに、

 

正確に言えば、初めての彼氏と破局して以来、

 

やっと重い腰をあげて、

 

書いてみようかな、と思ったのだ。

 

うごうごを。

 

ごうごうと。

 

傲慢に。

 

強欲に。

 

文字にして、頭から出してやらねば、私は溺死してしまう。窒息してしまう。

 

ぶくぶくと深い海の底。光も差さず。絡みつく藻。

私は継続力がない。分かっている。

 

私は短距離ランナーだ。マラソンは向いていない。

 

ADHDのグレーゾーンで、いわゆる衝動性の色が強い。

 

中学の時、友人には「一途な暴走機関車」と揶揄された。

 

私が書く文章だって、書いてるそばから、次々と色々なことが思い浮かぶものだから

 

つらつらとあっちゃこっちゃに流れるし、飛びまくる。

 

そんなへたくそな文章を、継続力のない私は、

 

それでも懲りずに離れられないでいる。

 

よーいどん、で、がむしゃらにキーボードを叩き、

 

息切れして、しばらく書くのをやめる。

 

留学後の逆ホームシックでやめる。

 

大学のサークルに手一杯でやめる。

 

失恋してやめる。

 

新社会人になってやめる。

 

でも、またこんな深夜に書いている。

 

離れても、しばらくすると、戻って来てしまう。

 

何度、コースアウトしたか分からない。

 

これからも、どうせまたすぐ場外へ逃げる。

 

それでも、このレースに戻って来てしまう。

 

性であり、業であり、意地であり、執着であり。

 

スラムダンクに憧れて入った中学のバスケ部は、

 

「あー自分は桜木花道にはなれないな。と早々に諦めがついたのに、

 

こればっかりは、文章ばっかりは、どうしても、

 

試合放棄をできないのだ。リングから降りられない。

 

降りても、のこのこ戻ってきてしまう。

 

どこかで自分は桜木花道になれると信じている私がいる。

 

どでかい熱いドラマの主人公だと、

 

そうでありたいと思ってしまう、自分が、

 

たぶん、小学生の頃から、そんなに変わることもなく、

 

私の真ん中にどかんと居座っている。

 

皆、そういうものだと思っていた。

 

ところがどっこい、そうじゃないらしい。

 

有り難いことに私は今までの人生で、書く機会を与えられる環境に身を置いてきた。

 

書いて、それが人の手に渡り、目にうつる、そんな場に。

 

例えば、それは小学校の学級新聞。

 

例えば、それは中学の読書感想文。

 

高校の校内新聞。

 

大学の創作演習と演劇サークルの脚本。

 

そうやって、なんやかんやで、書いて、褒めてもらう、好きだ、面白いという

 

そんな言葉を人からもらうことを生き甲斐というか、でもそういって差し支えない欲求を糧に今まで生きてきたのだ。

 

それが、当たり前だと思っていた。

 

皆、そんなものだと。

 

言わないだけで。

 

でも、どうやら違うらしい、と会社に入ってみて、思った。

 

書きたがり、はここには見当たらない。

 

皆、そういう欲というか、病を持ち合わせている人は、どうやら珍しいらしい。

 

皆っていうのは乱暴な言い方だけど、多くの人にとっては。

 

今まで、私と似たような人が集まるコミュニティに流れ着いて、ぬくぬくと居心地よく、属していたから、それは新鮮だった。目から鱗ぽろりぽろり

 

そして困るのは、新入社員には、書く機会なんか与えられないということだ。

 

報告書は書く。日報も書く。

 

だけどここには、私が今まで生きてきた文化はない。

 

遊びはない。

 

ないなら、作ってしまおうか。

 

最近、そんなことを想い始めた。

 

ないなら、私が始めればいい。

 

巻き込んで、味方にして、共犯になって、応援団。

 

今は、配属1カ月目のペーペーのくせして、

 

早速、社内サークルの立ち上げ方を模索している。

 

社内文芸サークル。

 

創作サークル。

 

まずは同期を巻き込もうと、今、勝手に思っているところ。

 

ここらへんの行動力は、持ち前の衝動性の強みだと思う。

 

4月は、3月に破局した反動で、手当たり次第に、男を追っかけていた。

 

まるで何かのまじないのように、「彼氏…彼氏…」と飢えていた。

 

街コンをはしごし、マッチングアプリをいれまくった。

 

恋愛商戦では、男女格差が激しい。

 

今日行った街コンは、女子500円、男子は7800円だった。

 

マッチングアプリは男子は月3000円、女子は無料だ。

 

だから、お買い得なのをいいことに、存分に男漁りに邁進した。

 

1月で10人の男性と飲みに行った。

 

その中には勿論、手が早い方もいらっしゃり、

 

いざ迫られると、しっぽを巻いて逃げ帰った。

 

火遊びをしても、頭の中で母と友人一同が

 

ホテル街への誘いを頑なに阻む。私はその声に従う。

 

それが私の火遊びのルール。掟だからだ。

 

結局、びびりなのである。引き返せなくなるのが怖い。

 

そして一か月、男の尻を追っかけて、5月。

 

分かったことは、不治の病である「カレシホシイ」はむなしいだけだということ。

 

むなしい。

 

ムナシイ。

 

なんだこの虚無感は。

 

焦燥感と飢餓感に突き動かされて、大して好きでもない他人とごはんをたべても

 

ちっとも楽しくない。

 

そう。楽しくない。

 

お金がかかるし、どんどん太る。時間を失う。

 

1カ月しゃかりきに恋活をして、得たのは、そんな教訓。

 

好きな人は、作るものではないなと、なんて当たり前の事に気が付いた。

 

その衝動を、ありあまるエネルギーを

 

どうか創作に向けられますように。

 

そっちの自分の方が好きでいられる。私らしい。

 

評価されるばっかりを目指すのではなく、

 

初心に帰って、創作を楽しみたい。

 

楽しんで、皆に読んでほしい。

 

面白がらせたい。

 

唸らせたい。

 

感動させたい。

 

そう。感動させたいのだ。私は。

 

それを、どうか忘れないで。私よ。

 

彼氏はそのうちできる、はずだ。

 

彼氏ほしいと言うと、どうやら神様は出会いを遠ざけるらしいから。

 

またしばらくは、どっぷりと、創作の海に潜ってみよう。

 

真珠の一粒くらい、落ちているかもしれないし。

 

そんな支離滅裂なことを、月曜になった深夜1時に思ったのでした。

 

愛しのスイス男

 

やまいぬです。

 

久しぶりにまたブログを書くよ。

 

今回はスイス男について書くよ。

 

スイス男?

 

誰やねん。

 

やまいぬとスイス男の出会いは2017年、春。

 

オトンが留学じゃあ留学じゃあ言うから、

 

やまいぬは大学2年の春にロンドンに6週間の語学留学したのだよ。

 

ちなみに私のオトンの一人称は

 

わしじゃあ。

 

オトンからの電話に出ると、開口一番、

 

「わしじゃあ。」

 

ちなみにオトンのメアドも

 

washijaa.com

 

みたいなやつ。

 

めっちゃ、わしじゃあ。

 

ちなみにちなむと、幼稚園の時、

 

オカンのことは、おかあさんと呼び、

 

オトンのことは、父上と呼んでいた。

 

否、呼ばされていた。

 

幼稚園で、「お母さんと父上への手紙」を読んだらざわついたので、
うちが特殊なのだと知った。

 

ここ数年でさらに、おハゲが加速なさって、焼き畑のよう。。。

 

何の話?

 

ロンドンに留学した話。

 

そう。オトンがGAVAとかも半強制的に通わせてくださり(ありがたいことです)

 

あ、そういや、TOEICも就活前に頑張ったんやで。

 

これがまた草生えるんだけどさ、

 

どうしてもTOEICをお守り代わりに持っておきたくて、でもどうしても3月1日に間に合わなそうで、

 

やまいぬは、考えた。

 

少ない脳みそ、フル稼働させて、考えた。

 

そんな時に耳に入ってきたのは、

 

「合宿免許ワオ!」

 

これや、と。

 

まさに天啓。

 

「免許合宿があるなら、TOEIC合宿もあるやろ」

 

ググった。

 

あった。

 

入金した。

 

(ありがとうオトン)

 

そんなこんなで、びっくりブラックスケジュールをこなした訳だ。

 

どこで。

 

渋谷で。

 

どんな。

 

とあるオートロックのマンションの一室で。

 

トイレには、「努力は裏切らない」って、
うざい顔のブタが言ってる張り紙がしてあった。

 

誰と。

 

TOEICのスコアとらないと卒業できない名古屋の美女や

 

意識高い系気取ったK大の筋肉マッチョの一男、

 

あと1週間後のTOEICで結果出さないと昇進できない崖っぷちOL、

 

求職中の、すでにTOEIC800点持ってる謎めいたおばさん

 

などなどの個性が強すぎる皆さんと日当たりの悪いマンションの一室で、

 

顔つき合わせて、朝から晩まで、がっつり1週間。

 

ひたすら聴いて読んで覚えて忘れて寝て病んで発狂して泣いて遅刻して

 

まぁ、一応、その修羅のTOEIC合宿の1カ月後にめでたく、
目標スコアはクリアしたから、あの艱難辛苦も無駄ではなかった。

 

就活生でTOEICとりたい皆さん、やまいぬ講座は無料ですよ。

 

ねぇ、何の話?

 

そう、ロンドン留学の話。

 

ロンドンってのは、美しい街なのさ。

 

衛生的にはよろしくないけど。

 

治安もよろしくないけど。

 

そういや私が女一人でぶらぶらビッグベン散歩してたら、

 

その3日後に、銃乱射テロがあって、

 

 


勇敢な若い警察官が亡くなってしまった。

 

後日訪れたら、沢山の花束と、子どもたちが書いた絵や手紙が沢山供えられていて、

 

胸が痛くて、やっぱり一人で泣いてしまった。

 

名古屋男からも、めずらしく心配LINEがきた。

 

名古屋男って誰やねん。

 

それは入れ替わりで1週間だけ、
語学学校のクラスメイトだった日本人の男の子。

 

私が留学して最初の1週間で目を付けていた男の子。

 

はっはっはっは。

 

なんでぐちをは留学に行ったのか。

 

語学向上のため

 

本場のミュージカルを観るため

 

否。

 

否ァァッ!!!!!!!!!



(背後で爆竹どかーん)

 


男を作るためだァァッ!!!!!!!!



(背後で活火山どかーん)

 


日本で無理なら、海外で男作るしかないだろうゥゥッッ!!!!!!!!



(背後でゴジラがおー)

 


注)ちゃんとミュージカル4本と美術館10カ所まわりました

 

ってなわけで、狙い目は「留学先の日本人の男の子」。

 

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

おお。変換で一発で出たぞ。すごいなインターネット。

 

あれやこれやで、やまいぬはハニカミ名古屋男子と仲良くなることに成功した。

 

大英博物館の前の広場で、

 

「おやおや若いカップルだね」

 

「ウェディングはいつだい?」

 

うふふあはは、と二人して恥じらっていたら、

 

腕にしょうもないバンド巻かれて、

 

代金ぼったくられそうになった。

 

海外コワイヨー

 

名古屋男子がバイトしてるからってなわけで、

 

洒落たレストランの本格カレーディナーを食べに行った。

 

いやぁ、お味も本格。

 

値段も本格。

 

「ごめん、俺、金、足りないわ。。。。」

 

いやぁ。

 

まいっちゃうよねぇ。

 

ロンドン滞在最後の1週間だった彼は現金が残り僅かだったそうな。

 

いや、じゃあ本格カレー食べるなや。

 

頭の中、カレー詰まってるのか。愚か者。

 

まぁ、何はともあれ1週間、ラブラブ過ごして、最終日。

 

明日は名古屋くんが帰ってしまう。

 

景色は最高。広がる夜景、運河、ロンドンブリッジ。

 

気温は最低。極寒。情緒とか知らん。はよ帰りたい。

 

しかし、名古屋くんはうっとりとした顔で、

 

お腹にはたっぷりとカレーを食らって、

 

夜の極寒ベンチから動きやしない。

 

なんなの。馬鹿は風邪ひかないの?

 

やまいぬってさ、良い奴だよな」

 

わかったわかった

 

「俺、最初、お前のこと、勘違いしてたわ」

 

ありがとありがと

 

「お前、女子大生の割りには馬鹿じゃないんだな」

 

はよはよ。。。。は?

 

「ロンドン来る女子大生って、皆キラキラした馬鹿ばっかりで困るよな」

 

風邪ひかない馬鹿?

 

「やっぱ、俺、付き合うなら、年上で高学歴なOLがいいな~」

 

一生インフルエンザで苦しめばいいのに。

 

私はその時、そっと手元のカメラフォルダから、
名古屋くんとピカチュウの着ぐるみに馬鹿みたいにハグしてる写真を消した。

 

馬鹿って言ったやつがバーカバーカ

 

意気消沈してたところに現れたのが、スイスくんだった。

 

ディカプリオ似の男前が、毎朝、ハイテンションで

 

やまいぬチャ―ン!!!カワイイーーー!!」と抱きしめてくれる。

 

「罪深いね。やまいぬが日本に帰ったら、日本の男が皆、振り向くよ」

 

やまいぬ、バーで踊ったのは僕が初めて?」

 

「じゃあ、やまいぬがこれから、バーで踊る度に、思い出すだろうね」

 

「初めての男を、さ」

 

韓国の大人女子と恋バナ大会したり、

 

やまいぬ、好きって顔に書いてあるわよ。お馬鹿さん」

 

スペインのファンキーな少女に応援されたり、

 

やまいぬ、酒飲んで、ドラッグキメて、一発ヤリな。あたしのベッド貸すからさ」

 

最後はフランスのボインのチャンネーにとられたけど。

 

スイス君は最後の夜に言った。

 

やまいぬはこれから素敵な彼氏ができるよ。僕みたいなね」

 

「ちなみに僕、地元でマッサージ師やってるんだ」

 

「ほら、こうやって、手をかざすとさ」

 

「子宮に、パワー、感じるだろ?」

 

100年の恋が冷めた瞬間であった。

 

そんなスピリチュアル系スイス男子が先日、日本旅行にやって来て、
2年ぶりに再会した。

 

「いやぁ、日本はいいところだね」

 

「僕は日本が大好き」

 

「ところで、あのラブなホテルって、何だい?」

 

にやにや顔に向かって、したり顔で肩をすくめてみせた、
やまいぬでした。



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ロンドンで王子様に会いました#4

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前回までのあらすじ

 

→新入生の皆さんとハンバーガー食べた

 

 

 

今回は、いつもより少しだけ写真多めの!!予定!!だよ!!!

 

 

 


 

 

 

何はともあれ、ハンバーガーを食べ終って、皆でぞろぞろ外に出た。

 

 

私たちがこれから通うことになる語学学校は、ロンドンのど真ん中にあって、

 

 

徒歩で国会議事堂とかロンドンアイとか行けるようなとこだった。

 

 

てなわけで、さっそく皆で行ってみましょうってことになり。

 

 

と言っても、私は正直、ここら辺の記憶が曖昧だ。

 

 

自分がくっついて歩いてる皆さんの名前もいまいちわからない、

 

 

自分がこれからどこに向かって歩くんだか、何を見に行くんだかも、

 

 

その時は、よく分かっちゃいなかった。

 

 

しばらく経ってから、

 

 

「あ、あの時観たあれが国会議事堂か」

 

 

「あれがナショナルギャラリーだったのか」

 

 

とか、ガイドブックやら見て理解した。

 

 

いまいち感慨に欠けるから、改めて自分でもう一回行ったりしたし、

 

 

そもそも近所だから、後日、他の人たちと、

 

 

今度はちゃんと仲良くなった友達と行く機会があって

 

 

良かったなあ、って話がここで書けるのは、まだまだ先なんだけどね。

 

 

 


 

 

 

何はともあれ書いていきましょう。

 

 

 

最初に向かったのはロンドンアイ。

 

 

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ロンドンで一番有名な大きい観覧車だ。

 

 

卵みたいな形のカプセルがゆっくり回っている。

 

 

 

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あー、そういや、1回も乗らないで帰ってきたなあ。

 

 

そうだ、この日はどんより曇天で、雨が降ったり止んだりしてた。

 

 

まさに私の心模様そのままだ。

 

 

私たちはロンドンアイに続く川沿いの道をずっと歩いてたんだけど、

 

 

目の前にはけっこういい景色が広がっていて、

 

 

川の向こうには、私だって聞いたことがあるビッグベンだって見えるのに、

 

 

どうしてだろう、私はやっぱり一人ぼっちで歩いていた。

 

 

皆の輪の中に入れなくて、

 

 

でも、景色の写真ばかりも悲しいから、

 

 

無理やりはしゃいで、

 

 

「ねぇ、撮ってくれる?」だなんてさ。

 

 

 

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ここら辺は、ただただ所在なく、ぽつんと歩いてた気がする。ひたすら。

 

 

聞こえないし、聞いてもらえなかった。

 

 

一緒にいるのに、一緒にいない。

 

 

私の隣に、誰も並んで歩かない。

 

 

うーん。悲しかったなぁ。

 

 

その後は橋を渡って、ビッグベンの近くまで行って、また写真を撮った。

 

 

川の反対側から向こうのロンドンアイが見える。

 

 

台湾の美人さんが、何やらケータイを見てはしゃいでいる。

 

 

ちらりとのぞくと、

 

 

女の子二人がカメラに背を向けて、

 

 

ロンドンアイに二人で作ったハートをかざしている。

 

 

多分、カップルの定番ポーズか何かなんだろうな。

 

 

台湾の美人さんと韓国のお洒落さんが二人でそれをやろうとするのを私は何回か手伝った。

 

 

勿論、私は撮影係だったけど。

 

 

でも、その後、私があんまりしょぼんとした顔をしてたのか、

 

 

「一緒に写ろうよ」と言われて、

 

 

二人とそれぞれ2ショットを撮った。

 

 

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撮った写真を見たら、ちょうど強い風が吹いてしまって、

 

 

私の髪の毛はライオンみたいになっていた。

 

 

あらら。

 

 

私が一人で歩いてたのは、

 

 

まず、私が引っ込み思案で上手く馴染めなかったのが大きいけど、

 

 

もう一つは、皆の歩くスピードが、てんでばらばらだったからだ。

 

 

仲良しの台湾美人さんと韓国お洒落さんは、二人で足取りも軽く

 

 

すたすた歩くけど、

 

 

フランスとスペインの背の高い二人の美人さんが、めちゃめちゃマイペースだった。

 

 

気づくと、遥か後ろで撮影会をしている。

 

 

皆がどんなに先を歩いて、見えなくなりそうになろうがお構いなしだ。

 

 

スペインの美人さんがモデルさんみたいにポーズとったら、

 

 

後ろで子ども連れのパパさんがこっそり真似してたのを、たぶん、気づいたのは私だけ。

 

 

橋を全員、渡り終えた時、皆で電話ボックスの前で写真を撮った。

 

 

 

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皮肉なことに、この写真がけっこう素敵に撮れている。

 

 

「留学で友達沢山できました!」みたいなね。

 

 

ちょうどSNSにあげると、いかにも映えそうな、そんな写真。

 

 

一見すると、本当に、とっても素敵な写真なんだけど、

 

 

写っている私の顔が、何とも言えない。

 

 

分かるよ。当時の私よ。

 

 

けっして社交的ではない私にしては、あの時、けっこう頑張ってたと思うよ。

 

 

出来上がった写真の私は、少しでも恰好よく写ろうと思って、コートの前をわざわざ開けて写ったんだけど、

 

 

何かちぐはぐな感じになってしまって、おまけに深い赤と中に着ていた深緑の相性が最悪だった。

 

 

うう。悲しい。

 

 

この写真にショックを受けた私は、もともとあんまり好きじゃなかったこのコートを、

 

 

ますます嫌いになってしまって、それ以後、あんまり着なかった。

 

 

ごめんね、お母さん。

 

 

だって、皆、お洒落で、美人で、気まずかったんだ。

 

 

防寒ばっちりのでっかいコートが。

 

 

おまけにこの時、私はスマホを、雨に濡れた道路に落っことしてしまうという失態を犯した。

 

 

外国でスマホが使えないなんて、考えただけで恐ろしい。

 

 

幸い、水たまりではなかったんだけど、しばらく調子が悪くて、

 

 

「ねぇ、写真撮ってよ」と頼んでも、

 

 

シャッターを押すと画面が黒くなってしまうと言われて、

 

 

何回か試しても、だめ。

 

 

あの時のきまずさったら、ない。

 

 

撮り終った写真をシェアしようとなった時に、

 

 

皆が何でもないようにair dropを使ってシェアし始めたんだけど、

 

 

Air drop

 

 

ナンダソレハ。

 

 

私はそんな機能が自分のケータイについてるなんて、その時、初めて知った。

 

 

いざ、私もやってみん。

 

 

……???

 

 

……できない。。

 

 

なんでか知らないが、ロックがかかっているらしく、できない。

 

 

私だけ、できない。

 

 

この時が一番、焦ったし、辛かった。

 

 

こんな思いしてまで、頑張ったのに、肝心の写真が手に入らないなんて。

 

 

そんなのってないだろう。

 

 

グーグルでロックの解除を検索しようにも、

 

 

あんぽんたんの私はポータブルWi-Fiを寮に忘れてきてしまって、それもできない。

 

 

外国の人は勿論、日本語が読めないし、日本人の二人も分からないと言う。

 

 

あれは、今度こそ本当に泣くかと思ったけど、何とか我慢した。

 

 

 


 

 

そっからは、

 

 

 

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お土産屋さんに寄ったり、

 

 

 

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紅茶屋さんに寄ったり、

 

 

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和菓子屋さんで一瞬だけ注目されて、

 

 

 

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何故かイタリアのお兄さんの撮影会が始まって、

 

 

 

途中でスターバックスに寄ってから、

 

 

最後に、ナショナルギャラリーのある広場に着いた。

 

 

 

 

 

 

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後ろの方で、背伸びして顔をひょいと覗かせてるのが、私である。 

 

 

うん。頑張った大賞を君にあげたい。お疲れ。

 
 
ちなみに、途中で寄ったスタバの店内無料Wi-Fi使って、
 

ググって、air dropを無事、解除する事ができまして、
 

めでたく努力の結晶のような写真たちを手に入れまして、
 

こうして使えるものは使っていこう精神のもと、
 

ブログに惜しむことなく使っている次第であります。
 

ここら辺の記憶はおぼろで、
 

覚えているのは、
 
 
ボスさんが大き目のカップケーキを紅茶と一緒に頼んできて、
 

「うわぁ、さっきハンバーガーやらポテト、たらふく食べたのに
 

よく入るなあ……」
 

って思ってたら、案の定食べきれなくて、
 

やまいぬちゃん、これ全部、後、食べていいよ」
 

と渡されてしまって、
 

内心ヒイヒイ言いながら食べた事ぐらいだね。
 
 

「食べていいよ」ってなんやねん。
 

小腹が空いてる時に食べたら、ちょうどよく美味しかっただろうカップケーキも
 
 

満腹な時に食べるのは苦行でしかなかった。勘弁してくれ。
 
 

イヤ、と言えない気弱な人間であります。
 
 

 
 
さて、ナショナルギャラリー前に着いてから、
 

(ナショナルギャラリーってのは、モネの絵とかが観れる素敵なギャラリーで、
 

それはまた今度、改めて、ブログに書きたい。行ったからね。一人で)
 

解散、という事になり、私は学生寮に帰ることに。
 

さぁ!!!!!!!
 

ついに!!!
 

ついに!!!ここまでやってきました!!!
 

長かった!!!
 

ここまでですでに、しんどい思いを散々書き連ねてきたのですが、
 

言うならば、ここが第1章の山場ですよ!!!!
 

しゃらさん!! ここです!! 前言ってた、事件ってのは!!!
 

何なら、このくだりを書きたいがために、このブログを6週間の頭から書くなんて無謀
な事を始めたようなものです。
 

どうぞ、苦笑いしてやってください。
 

線!!!
 

解散、と言っても、正確に言えば、
 

「夕飯の時間」がある、ホームステイの子たちはここでお別れしましょう、
 

という事になり、私は学生寮だったけど、すでにへとへとだったから、
 

一緒に帰らせてもらうことになった。
 

途中まで、日本人の一個下の女の子と一緒に帰った。
 

どこかでちらりと書いたけど、
 

「留学先で出会ったお互い英語が苦手な日本人」
 

「格好悪いし、せっかくだから、あまり日本語は使いたくない」
 

というバリアのせいで、上手く距離感が掴めずにいた。
 

この子も英語はそんなに堪能ではないから、会話の輪にあまり入れず、
 

雨が降ったり止んだりした時に、私は傘を忘れたので(馬鹿でしょう)、
 

時々、中に入れてもらったんだけど、
 

英語で喋るのは、なんか恥ずかしいし、
 

日本語も嫌だし、で、隣にいるのにお互いほぼ黙っていた。
 

あまりに気まずいので、何回か話しかけたけど、
 

さっき書いたような理由のことを、やんわりと言われて、
 

すぐに会話をやめてしまう。
 

だから、お互いに傘の下から美しいロンドンの景色を眺めて、
 

カワイーとか、キレーとか、おずおずとビューティフルとか、一応つぶやいたりもした。
 

半日、そんな感じだったから、私はうっすらと、ボスさん程ではないにしろ、
 

この子に対しても苦手意識を抱いてしまっていた。
 

二人で異国の地下鉄で、
 

オイスターカードとやらの使い方やら、
 

最寄り駅までの行き方を
 

片言の英語で何度も駅員さんに聞いた。
 

あっちの駅員さんってのは、日本ほど「ご丁寧」ではなくて、
 

「あっち行ってこっち」
 

みたいに指さしてオシマイ、みたいな人が多い。
 

勿論、親切で愛想の良い人もいるけどね。
 

そうして、その年下ちゃん(ちなみに彼女は女子大出身だそうだ)と別れて、
 

いよいよ一人になった。
 

ちゃんと、最寄り駅、
 

Angelまでは着いたんだ。
 
 

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問題はここからだった。
 

「あれ……ここからどうやって帰るんだっけ……?」
 

時刻は夕暮れ。
 

まだ、この時点であんまり危機感はなかった。
 

むしろ余裕ぶっこいてた。
 

だって、私は昨晩、ハルカに教えてもらったのだ。
 

学生寮からangelまでの道を。
 

学生寮→angel
 

おっと。
 

そうだ、昨日はそのまま「隣駅の」チキンのお店に寄ったから、
 

Angel→学生寮
 

の道が分からない。
 

いや。
 

何とかなるだろ。
 

だって、来た道を戻れば良いだけなんだから。
 

大丈夫。大丈夫。
 

まだ夕方だし、のんびり帰ろう。
 

と、のんきなことを考えて、私はお散歩しながら帰ることにした。
 

学生寮はちょうど、angelと、もう一つ先の駅の、ちょうど中間にある。
 

Angelから徒歩15分くらい。
 

まあ、何とかなるだろ。
 

私は、もう遠い遠い昨晩の記憶を頼りに、けっこうゴキゲンに歩き始めた。
 

横断歩道を1回渡って、道沿いにずっと歩いた……はず。
 

道沿い……???
 

大通りの交差点がいくつもいくつもあるのだが。
 

確かスターバックスを通り過ぎた。
 

あれ、スターバックス二つあるな……??
 

夜と夕方じゃ、街の景色が全く違って見えるな……
 

……
 

……??
 

まぁ、いいや。
 

それっぽい道、てきとうに歩いてみるか。
 

大丈夫。ダイジョーブ。
 

いやぁ、馬鹿だよねぇ。
 

何、悠長なこと言ってんだ。
 

でも、この「見知らぬ土地で迷子になる」っていう歌詞に出てきそうなシチュエーションは私の心を大いに躍らせた。
 

鼻歌でも歌いだしそうなくらい。
 

だって、やっと私は自由を手にした。
 

ここには、オカンもオトンもいない。
 

言葉の通じない外国の新入生の皆さんも、
 
 

仲良くなれない日本人もいない。
 

自由だ。
 
 

めっちゃ楽しい。
 
 

見るもの全てが新鮮で美しい。
 
 

沈んでいた気持ちが、華やいでくる。
 
 

ああ。やっと、息ができる。
 

そんな気持ち。
 

私はこの時、沢山、写真を撮った。
 

迷子になりながら、当の本人は、のんきに楽しく写真を撮った。
 

目に映る全てを写真に収めたかった。
 

どんどん日が暮れてあたりが暗くなっていくのも構わずに。
 
 

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天使という名の駅前の、小さな花屋が愛おしい。
 

ホームレスのおじさんに寄り添う犬と、
その隣にしゃがんで楽しそうに話しかけるお姉さんの横顔。
 

地下鉄からは路上パフォーマンスの演奏が小さく聞こえる。
 

私はあの時、冒険のただ中にいた。
 
 

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LOVE WHAT YOU DO
 

あなたのする事を愛せ。
 

まさに今の私にぴったりの言葉だと思った。
 

日本と違って、こんな素敵な言葉が何気なく日常にあるなんて、
 

なんて素敵なんだろう。
 

私はうっとりと通り過ぎた。
 

どんどん歩いて行くと、小さな中庭があった。
 

見ると、門は開いている。
 

私は迷わず、中に入った。
 

中は小さな森のようで、小道が続いている。
 

小さなベンチが並んでて、仲の良さそうなカップルが一組座って話している。
 

中庭は柵で囲まれていて、
 

柵越しに見たお家が明かりに照らされて素敵だった。
 
 

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この間までのサムネのイラストは、
 

この中庭の横の通りの写真を真似して書いた。
 

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暗い小さな森の道を進んでいくと、今度は川に続く階段が見えた。
 

やっぱり鍵は開いていたから、下って行った。
 
 
 
川面に光が浮いている。
 

夜の濃紺と明かりの黄色。
 

ドキドキしながら進んでいった。
 
 

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どうしてだろう。怖くない。
 
 
美しい美しい、誰も私を知らない国で、夜の色に染まって、
 
 
どこまでもどこまでも、私は一人で歩いて行ける、
 
 
そんな気がした。まるで熱に浮かされて。
 
 
でも、そうはいかないんだ。
 
 
私は橋をくぐって、小船の横を通り過ぎると、
 
 
もうそこは行き止まりだった。
 
 
戻らなきゃ。
 
 
どこに?
 
 
……私はどこに戻れば良いんだろう?
 
 
あれ……?
 
 
ここまでですでに1時間が経過していた。もうすっかり暗い。
 
 
私はひとまず、もと来た道を足早に引き返して、
 
 
駅に戻った。
 
 
もう川も花屋も光も闇も、優しくなかった。
 
 
急に、それは怖いものになった。
 
 
私は昨日の記憶を頼りに、今度はさっきと違う道を選んでみた。
 
 
それでも学生寮はちっとも見つからない。
 
 
「あのね、スーパーマーケットが見えたら、学生寮はすぐそこって覚えてね。通り過ぎ
ないように、それを目印に曲がってね」
 
 
その小さなスーパーマーケットがいつまでたっても見えてこない。
 
 
おかしいな。
 
 
私は何べんも何べんも、駅と交差点から伸びる大通りを行き来した。
 
 
歩いてみて、
 
 
「たぶん、この道は間違っている気がする」
 
 
と思ったら、また引き戻すの繰り返し。
 
 
駅のすぐそこのスターバックスの女神が意地悪にこちらを見ている。
 
 
途中で疲れて、パン屋さんでサンドイッチとヨーグルトとジュースを買った。
 
 
晩御飯として。
 
 
ちゃんと部屋に戻って、安心して食べようと。
 
 
私は晩御飯の入った紙袋を片手にまた歩いた。
 
 
歩いて歩いて歩いた。
 
 
スタッフの人にもらった地図を、なんで置いてきてしまったんだろう。
 
 
どうしてあの時、私は大丈夫だと思ってしまったんだろう。
 
 
何でたった一度教えてもらっただけで。
 
 
ああ、ちゃんとポータブルWi-Fiを鞄に移しておけば、
すぐに検索してナビで帰れるのに。
 
 
見ると、携帯の充電は5%になっていた。
 
 
充電器なんて持ってきてない。
 
 
どうしよう。
 
 
歩いていたお兄さんに、
 
 
「すみません、この名前の学生寮、場所知りませんか」
 
 
半泣きで聞いても、勿論、分かるはずがない。
 
 
どうしよう。どうしよう。
 
 
何でこんな日に限って、ヒールをはいているんだろう。
 
 
それは、少しでもお洒落に、初めての友達に思ってほしかったから。
 
 
もう足の裏の感覚がない。
 
 
ロンドンの天候は変わりやすい。
 
 
なんと、雨まで降ってきてしまった。
 
 
傘までもっていないなんて、私はどこまで馬鹿なんだ。
 
 
携帯の充電が、また減ってしまった。
 
 
使えなくなるのも時間の問題だ。
 
 
びしょびしょになりながら、駅の案内板の地図を見ていると、
 
 
 
タバコくさいおじさんがニヤニヤと話しかけてきた。
 
 
返事もせずに逃げ出す。
 
 
ガサガサッ
 
 
ずぶ濡れだったせいで、紙袋の底が抜けてしまった。
 
 
それはちょうど、私がさっきくぐった橋の上。
 
 
サンドイッチはぶちまけられて、ジュースは転がり、
 
 
ヨーグルトは蓋が空いて、私の靴にべっとりとついた。
 
 
よりによって、刺繍が施してあるところに。
 
 
涙は出なかった。
 
 
どうしようもなくて、ただ空を仰いだだけだった。
 
 
その仰いだ顔にまた雨は降り、
 
 
最悪だ。なんなんだ、これは。
 
 
もう、なんなんだよ。
 
 
私、ここで死ぬんじゃないだろうか。
 
 
大声で泣けるもんなら、今すぐにでも泣き出したいのに、
 
 
私はジュースだけ拾って、また歩く。
 
 
ふと、お母さんの声を思い出した。
 
 
「いい? 面倒くさがらずに、学生寮の住所はちゃんと控えておきなさいよ」
 
 
私はなけなしの充電を使って、「メモ帳」を開いて、渋々書いておいた
学生寮の住所を、ボールペンで、ガイドブックの裏表紙に書き写した。
 
 
もう、充電は2%
 
 
私はあのおじさんがいないのを確認して駅に戻って、
駅員さんにその住所を見せた。
 
 
駅員のおじいさんは、案内板の地図を使って、丁寧に道を教えてくれた。
 
 
私が覚えられないので、道順を書いてもらっていいですかと聞くと、
 
 
奥から、紙の地図を持ってきて、
 
 
私のボールペンを使って、ルートを書いてくれた。
 
 
「いいかい。この通りに、まず目の前の大通りをまっすぐ歩くんだよ。
 
 
そうすると今度はこの通りにぶつかるから、そこを曲がって、
 
 
丸つけとくからね、いいかい、ここを曲がるんだよ、
 
 
そしたら最後にこの細い道を曲がると着くよ」
 
 
私は何度もお礼を言って、歩き出した。
 
 
地図は雨に濡れて、すぐにぐしゃぐしゃになって、ボールペンは滲んだけど、
 
 
とにかく歩いた。必死だった。
 
 
途中で心配になって、コンビニに寄って、
 
 
「この住所に行きたくて、この地図をもらったんですが、この道、私あってますか?」
 
 
レジのお兄さんはしばらく、ぐしゃぐしゃの地図を見て、住所の走り書きを見て、
おもむろに自分のスマホを取り出すと、
住所を地図のアプリで検索してくれた。
 
 
「大丈夫あってるよ。もうすぐだから頑張りな」
 
 
そのコンビニでもう一度、サンドイッチとヨーグルトを買って、
お礼を言って、歩いた。
 
 
あ。
 
 
スーパーマーケット。
 
 
あった……
 
 
それは改めてみると、本当に小さくて、気づかずに通り過ぎてしまいそうだった。
 
 
やっと着いた……!!!!!
 
 
もう迷子になって2時間が経っていた。
 
 
まっすぐたどり着けば20分の道を。
 
 
私はもう狂喜乱舞の勢いで、学生寮の扉に駆け寄った。
 
 
鍵をインターホンにかざすと、扉はついに開く、
 
 
……はずだった。
 
 
あれ????
 
 
おい、勘弁してくれ。
 
 
おい!!!!!!!!!!
 
 
それは地獄の迷子劇、最終章の幕開けだった。
 
 
皆さん、この長いブログにあと少しだけお付き合いください。
 
 
私だって、本当に早く帰りたかった。
 
 
なのに。
 
 
 
学生寮の扉が、開かない。
 
 
意味分からん。
 
 
そんなことあってたまるか。
 
 
もう気が狂うんじゃないかと思ってたら、たまたま他の学生がやって来て、
 
 
 
私を怪訝そうに見ながら、
 
 
ピッ
 
 
いとも簡単に鍵を開けた。
 
 
???????
 
 
 
私はもう何が何だか分からなかったけど、その男子学生の後に滑り込んだ。
 
 
私と彼はそのままエレベーターに乗った。
 
 
えっと……
 
 
私は4階を押した。
 
 
ピンポーン
 
 
さぁ、やっと帰れる。やったああああ!!!!!
 
 
 
11号室 12号室
 
 
あれ????
 
 
私の部屋は、確か24号室だったような。
 
 
あれ???????
 
 
あの時、ハルカに笑われながら、
 
 
4階24号室ね。オッケーオッケーと確認したはずなのに。
 
 
ない。
 
 
4階に24号室がない。
 
 
もうここまで散々、迷子になっていたから自分の記憶はちっとも信用できなかった。
 
 
もしかして、6階の間違いだろうか。
 
 
私は6階に行った。
 
 
ゲ。
 
 
さっきエレベーターで乗り合わせた男子と、また会ってしまった。
 
 
ものすごい、不審そうに見られている……気がする。
 
 
しかも6階にも24号室はない。
 
 
私は慌ててエレベーターに引っ込んで、8階に行ってみた。
 
 
ここも違う。
 
 
偶数階でさえ、記憶違いなのか????
 
 
他の階に行くも、違う。
 
 
もしかして、「4階」があってて、24号室が記憶違い??????
 
 
私は4階の12号室に戻って、そおっと扉を押してみた。
 
 
鍵はかかっていなかったようで、扉はすんなりあいた。
 
 
!?!?!?!?!?!
 
 
ハイ!?!?
 
 
扉を開けると、目の前に
 
 
パンイチ半裸のゴツいお兄さんがニンジンを切っていた。
 
 
もう出来うる一番の速さで扉を閉めた。
 
 
驚き過ぎて、声も出せない。
 
 
 
人間、本当にパニックになると、声が出せないらしい。
 
 
私はもう砂漠の遭難者みたいな気持ちで、上から下まで学生寮を彷徨う羽目になった。
 
 
エレベーターを何度も使うと乗り合わせた人に怪訝な顔をされるのが耐えられなくて、泣き泣き階段を使った。
 
 
分からない。もう本当に、何が何だか分からない。
 
 
もう半裸ニンジンのお兄さんがトラウマで、扉を開くのも嫌だ。
 
 
私はグランドフロアに戻って、人目につかない隅の方にひっこんで、しゃがみこんだ。
 
 
 
本当に本当に、格好悪くて情けなくて、死にたくなる程、惨めな気持ちだったけど、
 
 
ひん死のスマホをとりだして、急いでメッセージを送った。
 
 
 
その宛先は、まだ知り合って1日しか経ってないハルカ。
 
 
 
お洒落で、留学を楽しんでいて、高学歴で、良い人。
 
 
 
私は劣等感に震えながら、テキストを打ったのだった。
 
 
 
「かくかくしかじか、もう本当に困ってしまって、どうしようもないので、
 
 
 
すごく申し訳ないのだけれど、どうかグランドフロアまで迎えに来てもらえませんか」
 
 
 
もう自分の、何もかも、信じられなかった。
 
 
 
世界一の大馬鹿やろうのアンポンタン。
 
 
 
ついに充電は切れてしまった。
 
 
 
私はもう惨めだし、寒いしで、文字通り、ぶるぶる震えながら、
ハルカが来るのを待っていた。
 
 
 
ずっと、待っていた。
 
 
 
……ハルカは、来なかった。
 
 
 
カップルがふざけあう声も、男の子同士が酔っ払って騒いでるのも、
 
 
 
聞きながら、ずっと隠れていた。
 
 
 
後で聞いたら、ハルカはこの日、遠くに買い物に行っていて、
部屋に帰ってきたのは深夜だった。
 
 
 
突然、雷みたいな閃きが、私を全身を走った。
 
 
 
もしや。
 
 
 
もしかしてもしかして。
 
 
 
私は学生寮を飛び出した。
 
 
 
そして、走って行った先に
 
 
 
「第二学生寮」があった。
 
 
 

ぶるぶるぶるぶる、もはや痙攣しながら、
 
 
 
鍵をかざした。
 
 
 
ピッ……
 
 
あ、あいたーーーーーーーーー!!!!!!!!!
 
 
 
実は私がさっきまでいたのは「第一学生寮」で、
 
 
「男子寮」だった。
 
 
どうりで。
 
 
どうりで、すれ違う人みんな不審そうに見てくると思った。
 
 
 
そりゃあ、マッチョのお兄さんも半裸でニンジンを切るわけだわ。
 

私は2時間歩きまくって、さらに1時間男子寮を彷徨い、最後は身を潜めていた。
 
 
今世紀最大の馬鹿なんじゃないのか。我ながら。
 
 
なんて可哀そうな人間なんだ。
 
 
ちゃんと4階には24号室があって、
 
 
何も知らないルームメイトが
 
 
 
“Hi! How are you?”とか呑気に声をかけてきて、
 
 
 
憎しみを込めてアイムファインと返しておいた。
 
 
 
ちなみにこんな思いをして買ってきたサンドイッチは馬の糞みたいな味がした。
 
 
 
ヨーグルトは、何故かプロテインがたっぷり入っていた。
 
 
 
私は。
 
 
私は、
 
 
その夜、ベッドで少しだけ泣いたかどうか、
 
 
もう忘れてしまいました。
 
 
 
 
 
 
今日はロンドン二日目、後半戦のお話でした。
 
 
 
続きは、また今度。
 
 
 
やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ
 
 
 

 
 
なんだお前 男なら
王子なんか 気取るなよ
優しい顔も言葉もいらない
乱暴に強引に キスしてくれよ
 

 

ロンドンで王子様に会いました#3

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前回までのあらすじ

 

→新入生、集合!!!!!

 

 


 

 

 月曜は基本、授業が無い。

 

 

ここにいるのは、皆お揃いの「新人」ばかりだ。

 

 

カフェテリアから、何組かに分けられて、ぞろぞろと教室に移動する。

 

 

着いた教室には10人くらいいただろうか。

 

 

一応、私はルームメイトの子の隣に座った。一応。

 

 

皆がぞろぞろ着席していると、何やら元気な先生がやってきた。

 

 

「ハァーーーーィ!!皆さんごきげんようーーーーー!!!!」

 

 

金髪でクネクネショートの、チアガールを思わせる先生。

 

 

先生の服は蛍光ピンクのTシャツだったか、派手な花柄だったか。

 

 

うう。苦手だ……

 

 

私は先生の「陽」のエネルギーでさっそく吹き飛ばされそうになった。

 

 

先生、そのまま、テーブルに置いてあった「おもてなし」をめちゃめちゃ勧めてきた。

 

 

手作りクッキー3種(勿論、特大)、何かのパウンドケーキ、バナナ、リンゴ、他にもあった気がするけど、忘れた。

 

 

ディズニーだったら、お盆の上のリンゴに手足が生えて踊りだしそうだ。

 

 

「さあ、召し上がれ!!!」

 

 

と、んな、いきなり言われても、誰も食べようとしない。

 

 

「アラ、皆、遠慮しないでーーーーーー!!!」

 

 

って言いながら、先生は自分でクッキーを食べ始める。

 

 

これが外国の洗礼ってやつか……

 

 

日本人には厳しいぜ、と思ったけど、他の国の人たちもおのおの苦笑いしてた。

 

 

だよねぇ。

 

 

全員、着席して、先生も一旦、「おもてなし」を休止したところで、

今度は気の遠くなるほど長い「お話」が始まった。

 

 

語学学校の先生たちの紹介やら、カリキュラム、緊急時の対応とか。

 

 

いや、まぁ、大事なんだろうけど。

 

 

長い。

 

 

長いよ、ティーチャー。

 

 

サービス盛り盛りのパワーポイントは終わりが見えない。

 

 

あと先生が気を利かせて、それはそれはオーバーな英語で話してくれるのだけど、

 

 

それはそれで、聞いてて疲れる。

 

 

何でか知らないけど、先生はしょっちゅう

 

 

「ウキ!」「ウキ!」と口癖のように言うので、

 

 

意識朦朧としながら(だってロンドン到着の翌朝8:30集合だ)、

 

 

「先生はサルなんだなぁ……」

 

 

とか考えてた。

 

 

まあまあ、限界である。

 

 

後日、めでたくできた友人と話して分かったことは、

 

 

先生はサルの真似をしてたんじゃなくて、

 

 

「OK!?」「OK!?」

 

 

と言ってたらしい。どうかしてるのは私の耳だった。

 

 

(でも友達も「あのウキ!の先生覚えてる?」って話し出したから、

特徴的だったのは確かだ)

 

 

私は目を開けてることに全力を注いでたから、

 

 

残念ながら、先生の話はスピードラーニングみたいに聞き流してた。

 

 

「アラ、皆、眠っちゃいそうねーー!!」とか言ってるのは聞こえたけど。

 

 

先生が何か4桁の数字を言って、皆、覚えてねーーとか言ってるのも、

 

 

「緊急時には私は皆の後についていこう」とかぬるい事考えてメモさえしなかった。

 

 

実は、この数字が、けっこう大切だったてのが後々、分かるのだけど。

 

 

先生の長い長い「はじめのお話」が終わってからは、

 

 

今度は一人づつ、学生証のチェックと、

 

 

ペアでプレイスメントテストを受けることになった。

 

 

先生と(これはウキの先生じゃない他の先生だった)2対1で軽い会話をして、

 

 

明日からのクラスが振り分けられるそうな。

 

 

順番が回ってくるまで、結構、暇である。

 

 

またウキ先生がクッキーやらリンゴをごり押しし始めて、ようやく皆、手を伸ばすようになった。

 

 

あ、そうだ。ペットボトルの水とかも配ってたな、ウキ先生。先着よ!とか言って。

 

 

ちなみにチョコクッキーは、めちゃめちゃ、めちゃ甘かった。

 

 

あま~い、とかじゃなくて、「あ、甘い…ッッ!!」ってなるやつ。

 

 

なかなかヘビーな甘々クッキーだった。あぶねぇ。

 

 

にしても、だ。

 

 

この待ち時間が、だいぶキツかった。

 

 

先生はゴキゲンにユーチューブからBGMとかかけてくれたけど、

 

 

そうもいかない。

 

 

頼みの綱の私の隣のルームメイトは、その隣の誰かさんと

ハイレベルな英会話で盛り上がっている。

 

 

反対側の私の隣の子はiPhoneに釘付けだ。

 

 

どっちにも頑張って話かけたけど、あっという間に会話が終わってしまう。

 

 

会話のキャッチボールというより、へなちょこの豆鉄砲を一人でしょぼしょぼ打っている気になる。

 

 

ちなみに隣のスマホガールにはネタが無さ過ぎて、

 

 

「見てみて、このアプリで録音すると店内BGM検索してくれるんだよ」

 

 

って、先生の流すBGMで試しにやってみせたら

 

 

(私はこれ最近、教えてもらってマイブームだった)

 

 

あー、それね。私も同じようなやつ持ってるよ、と一蹴されてしまった。

 

 

この悲しいBGM検索アプリ、なかなか実は6週間、活躍してくれた。

 

 

ロンドンのあちこちで拾った曲の一つ一つに思い出が詰まっていて、

 

 

今聞いても、胸がぎゅっとなってしまう。

 

 

こうして、私は両隣りの女の子との会話に失敗したわけで、

 

 

もう大人しくしてれば良かったんだけど、

 

 

それがさ。

 

 

聞いてよ。

 

 

後ろに日本人のイヤな女が座ってたのさ。

 

 

私が勝手に敵対視してただけだけど。

 

 

その人が、まぁブイブイトークを回してるわけだ。

 

 

私の真後ろで。

 

 

華麗に「ジャパントーク」を繰り広げている。

 

 

生き生きバリバリ、スピーキングしてるわけ。

 

 

小粋なジョークと突っ込みなんかも、知的に素敵に、兼ね合わせちゃってるわけ。

 

 

やめろおおおおおおお。

 

 

私の後ろでやめろおおおおおおお。

 

 

なんか焦るから、やめてくれええええええええ。

 

 

意を決して、

 

 

「あ、私も東京出身だよ!」

 

 

って振り向いたら、

 

 

「あ、ウン、私も大学、東京」

 

 

って一言、冷ややかに言われてオシマイ。

 

 

私はそそくさ、前に向きなおした。

 

 

あああああ。居心地が悪いよううううううう。

 

 

テストの順番はまだまだ回ってきそうにない。

 

 

私はここで暴挙に出た。

 

 

「ちょっとごめんね」

 

 

隣の子たちに謝りながら、はい出ると、

 

 

私はわざわざ、一列前、私のはす向かいの子のとこまで出向いた。

 

 

もうこの時点で私の色んな数字が削れまくってた。

 

 

もうどうにでもなれ!!!!!えいやー!!!!

 

 

「あの…!!! 私とお話してください!!!」

 

 

ドーン

 

 

「あ、あ、あ、あなたとお話したいです!!!!!」

 

 

ドドーン

 

 

私がコレ、イケメンにされたら、その一途さに胸打たれて結婚する。

 

 

ああ、悲しいかな、私は人選を誤ったらしい。

 

 

そもそも何でその子に話しかけることにしたかというと、

 

 

他の子たちがぎこちなくも談笑してるなか、

 

 

その子は一人ポケーっとして、かと思うと、立ち上がって、クッキーをもさもさ食べている。

 

 

追い詰められたその時の私は思ったのだ。

 

 

「きっと、あの子も人見知りに違いない!!!!

 

 

さっきからクッキー、地味に食べまくってるけど、あれは手持無沙汰で仕方なく食べているんだろう!!!

 

 

これは話しかけたら、お友達になれちゃうんじゃないの!!!!???」

 

 

この時の私はまさに「休み時間、一人で寂しそうにしてる転校生に話しかける委員長」だった。

 

 

(自分がボッチなのは棚上げ)

 

 

ところが、だ。

 

 

いざ、話しかけてみたら、オヤ、思ってたのとチガウ。

 

 

率直に言って、思い切り、怪訝な顔をされてしまった。

 

 

(どこから湧いてきた?????)的な。

 

 

しかし、私は遥々、「会いに来て」しまった手前、引き下がるに下がれない。

 

 

無理矢理、話をつづけたことで分かった事がある。

 

 

彼女は16歳(!)である

 

=単にお菓子大好き

 

=別に寂しいとか思ってなかった

 

=むしろ大きなお世話

 

 

オーマイガー

 

 

なんてこった。

 

 

16って聞いて、思わず

 

 

「若いね!!!?」

 

 

って言ったら、

 

 

「いや、あなたもね?」

 

 

って、なめんなよ、みたいな感じでムッと返されてしまった。

 

 

慌てて、「いやー私、英語、全然できなくて、なんかごめんねー」

 

 

って言ったら、

 

 

「うん、だから、ここに来てるんでしょ」

 

 

って、なおさら、ツンと返されてしまった。

 

 


 

 

 

 

ちなみに、私はクラス分けテストでB1.2だった。

 

 

Aがイエスとノーしか言えない人

 

 

Bがそこそこ

 

 

Cがネイティブ並み

 

 

で、それぞれA1、A2、A3と三つに分かれて、またさらにA1.1…と三つに分かれる。

 

 

まぁ、冴えないスタートだが、ぼちぼち、という感じ。

 

 

皆がテストを受け終わると、またウキ先生がやってきて、

 

 

「さぁ皆でお散歩しましょうーーーー!!!」だと。

 

 

まじで勘弁してほしい。

 

 

私のHPはすでにレッドゾーンに突入してるってのに。

 

 

私は昔から、コノ手の「ゾロゾロ皆で歩きましょう」みたいなのが大嫌いだ。

 

 

だって、嫌じゃん。

 

 

誰と歩くのか、とか、一人で歩いてると寂しいやつだな、とかさ。

 

 

こんなの中学、ぎりぎり高校で、もうオサラバだと思ってたのに。

 

 

もうこの時の私はすっかり元気をなくしていたから、もう誰にも話しかけなかった。

 

 

ぶすっと先生の後を一人でぶらぶらついていった。

 

 

皆、すっかり「お喋り相手」を確保して、楽しそうに歩いている。

 

 

「ボッチ」なのは、私と、もう一人冴えない日本人の男の子だけだった。

 

 

「あーこの『別に平気だし』って強がる感覚、昔よくあったなー」なんて。

 

 

ハタチで何やってんだって話なんですけどね。

 

 

例のイケイケ日本人オンナは相変わらず華麗にトークをキメてるし、

 

 

なんか日本人の女の子っぽい二人が並んで歩いてるのも見かけたけど、

 

 

意地になって、知らんふりした。

 

 

皆で学校の周りを散歩して、ウキ先生は近所のお菓子やさんで

 

 

「もーここのブラウニーが私を太らせるのよー」

 

 

なんて言いながら、ご主人から一切れもらって、つまんでいた。

 

 

実際、このお店は本当に素敵で、6週間で何回かブラウニーを買った。

 

 

 

ほら、素敵でしょ。

 

 

……って、写真を見せたかったんだけど、撮り損ねたらしい。

 

 

まだロンドンで勉強してる友達に写真を撮って送ってくれってSNSで頼んだら、

 

 

「いいよいいよー余裕だよー」って快諾したくせに、

 

 

案の定、忘れてくれちゃったらしく、

 

 

休日明けに学校行った時に、ちゃんと今度は撮るから!!!

 

 

って言ってたから、彼女が送ってくれたら、後で、ここに加えておきます。

 

 

しばしお待ちを。

 

 

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※送ってもらえました!(5/9現在)

 

 


 

 

 

やっと、お散歩が終わって解散になった時、時刻は昼過ぎだった。

 

 

うーん。へとへとだけど、家に帰るにはあまりに早い時間。

 

 

学校の中庭まで戻って来て、解散になったのだけど、

 

 

私はルームメイトの子を見つけ出して、聞いた。

 

 

「ちなみに、この後、何する、とか決めてたりする?」

 

 

さりげなーくね。

 

 

そしたら、

 

 

「友達と待ち合わせてゴハン食べるよ」ってさ。

 

 

あーーー

 

 

そうだよねーーーーー

 

 

やまいぬはどうするの?」って聞かれて、

 

 

「いや、うーん、

 

 

……ひとりで散歩する、かなぁ」

 

 

お通夜みたいな顔した私を見かねたのか、

 

 

「あ、じゃあさ、あの人たちにいれてもらえば?」

 

 

と言って示した集団は、

 

 

うおおおおお

 

 

さっきのイヤな女あああああ(が中心にできたっぽいグループ)

 

 

いやー、私、ほら、あれなの、シャイなの、人見知りで、だから、ちょっと無理かなーー

 

 

とか、もごもご焦って言い訳したら、

 

 

「大丈夫だよ。ほら、行っておいでよ。きっと楽しいよ」

 

 

うう。

 

 

これは行くしかなさそうな。

 

 

私はあんなに(内心)抵抗しまくってたボス女(これからそう呼ぶ)に、

 

 

頭を下げて言ったのだ。

 

 

「わたしも、いいいいいいっしょに、行っていい!?」

 

 

こんな屈辱あるもんか。くそう。

 

 

ボス女の「アラ」みたいな大きな目がイヤに覚えている。

 

 

その時は、「いっそ殺せえええ」くらいに思ってたけど、

 

 

後々、私は背中を押してくれたルームメイトに感謝する。

 

 

私がロンドンで一番仲良くなった女の子は、この中の一人だ。

 

 

もし、私がこの時、意地を張って、一人でお散歩していたら、

 

 

私は6週間をずっと一人で過ごしていたに違いない。

 

 

実際、さっき隣で同じく一人で歩いてた冴えない彼は、

 

 

見ると、いつも一人だった。

 

 

あ、途中から日本人の男子の友達ができてたっけな。

 

 

1回だけ、

 

 

「外国人の友達できた? 私、まだ仲良くなれなくて」

 

 

って話しかけたら、

 

 

「あーだめだめ。あいつら、何言ってるのか全然、分かんねーもん」

 

 

と、つまんなそうに言っていた。

 

 

私は、たまたま運が良かっただけだ。本当に。

 

 

 

 

 


 

さて、そのグループでランチしましょうということになった。

 

 

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内訳は、

 

 

(多分)イタリア人のお兄さん

(多分)イタリアかどこかの女の子

フランス人のお姉さん

台湾のお姉さん

韓国のお姉さん

スペイン語圏のどこかのお姉さん

日本人の女の子(私の一つ下)

ボス女(私の3つ上)

 

と、私の9人。なかなかの大所帯だ。

 

 

皆でぞろぞろ、感じの良いお店に入った。

 

 

通されたテーブルの真ん中にはデカいケチャップといかにも辛そうなソースが置いてあって、小さなお皿にトランプが一枚。

 

 

「これなんだろね」って誰かが言って、

 

 

「それきっと席番号だよ」

 

 

「なるほどね」って、また誰かが言った。

 

 

そこでおのおの、ハンバーガーを頼んだ。

 

 

あと、シェア用のポテト。

 

 

私ともう一人だけ、たぶん韓国の女の子がホットの紅茶も頼んだ。

 

 

ハンバーガーは出てくるのが、けっこう遅くて、

 

 

まぁ、私がそう感じただけなのかも知れないんだけど、

 

 

待っている間のお喋りがけっこう辛かった気がする。

 

 

写真の手前にいるのが、ボス女。

 

 

その隣の唯一男子、イタリア人のお兄さんはムードメーカー。おちゃらけ

 

 

その二人が中心に喋って、というか、

 

 

ボス女……って書くのも心苦しくなってきたから、

 

 

少しだけマイルドに、ボスさんにしよう。

 

 

ボスさんが、イタリアのお兄さんをいじって、隣の韓国と台湾のおしゃれ姉さんたちが笑う、盛り上がる、

 

 

みたいな感じだったような。

 

 

そうなんだ。テーブルは9人もいるから割と大きくて、

 

 

たまたまなのか何なのか、

 

 

お喋り上手の、盛り上げ上手が片側に集まってしまったから、

 

 

テーブルの反対側が静かになってしまった。

 

 

そうなんだ。私が座ってるほうは、静かだったんだ。

 

 

私の隣に日本人の女の子が座ったんだけど、

 

 

「日本人とは喋らない」

 

 

っていうバリアをお互い張ってたから、全然喋らなかった。

 

 

とにかく「何とかせにゃあ」と気ははやるも、うまくいかなくて。

 

 

今、思うと、それは何もテーブルのこちら側だけではなかったらしい。

 

 

皆、少しづつ、ちょっとづつ、困ってたし、頑張ってたんだろう。

 

 

だから、何か、「ネタ」というか、会話の種を見つけると、

 

 

何気なく、さりげなく、でも、逃さず、すかさず、言葉にした。

 

 

卓上のトランプも。見るからに辛そうなソースも。

 

 

なんか、そういうゲームみたいだなぁって思った。

 

 

勝ちとか負けとか、よく分からないけどさ。

 

 

私は勝てないのは重々承知で、

 

 

でも「負けてませんよ、全然、負けてはいないんだけどね、惜しいね」

 

 

みたいなのを、誰かに、審判みたいな人に、

 

 

言ってほしかったんじゃないかと。

 

 

自分では、そう思ってた。

 

 

諦めて黙ってしまえば、それは負けだ、

 

 

そんなみじめなこと、してたまるかってさ。

 

 

こなれたように、へっちゃらなように、カジュアルに。

 

 

フランス人の女の子のスマホの画面がバキバキだったから、

 

 

それを言葉にした。

 

 

会話、すぐ終わっちゃったけど。

 

 

ソースも、

 

 

「えー辛いよー」

 

 

って、皆と同じように大げさに顔をしかめてから、

 

 

「あれ、本当だ。イケるイケる」って。

 

 

面白いのは、皆が大なり小なり同じ心持ちだったから、「会話のネタ」が

巡回することだ。

 

 

あっちがソースの話をして、こっちがスマホの話をして、

 

 

一通り終わると、バトンタッチ。

 

 

「はーい、入れ替えますよー、皆さん、ついてきてますかー」みたいなさ。

 

 

また、だいたい同じくだりをお互い反対側で繰り返して、

 

 

それはちょっと奇妙だったけど、

 

 

皆がこのゲームにそこそこ真剣だったから、馬鹿にするやつはいなかった。

 

 

ちなみに、ハンバーガーはめちゃめちゃおいしかった。

 

 

あー、今、写真を探したけど、撮ってなかった。

 

 

それどころじゃなかったんだな。

 

 

ちゃんとした、ハンバーガーってこんなにウマいんだなって、

 

 

ちゃっかり、しっかり、ウマいモンはウマいと思うわけで。

 

 

一人で「うめぇ」「うめぇ」って地味に興奮してがっついてたら、

 

 

はす向かいの台湾の美人さんが、

 

 

お上品にハンバーガーをナイフで切り分けて、

 

 

手をいっさい使わずに召し上がってたから、

 

 

やっちまったなぁ、と。

 

 

もう食べちゃったんだけどさ。すでに。美味しかったよ、おかげさまで。

 

 

隣のイタリアの女の子が黙々とピクルスやらマッシュルームやら抜いてたから、それも

勿論「言葉」にしたんだけど、

 

 

そういや、あの大きなマッシュルームの話も「巡回」してたなぁ。

 

 

「何で抜いてるの?嫌いなの?」

 

 

「うん。嫌い」

 

 

「じゃあ、何でマッシュルームバーガー選んだの」

 

 

「こんなにマッシュルームが大きいと思わなくて」

 

 

「なるほどね」

 

 

私、一歩「リード」したくて、

 

 

大して好きでもないし、むしろ苦手だったけど、

 

 

「じゃあ、私が食べてもいい?」

 

 

って、内心「ウエー」って思いながら、その特大マッシュルームを食べたりなんかもした。

 

 

どうせ同じこと話すなら、皆で話せばいいんだけど、そうもいかずに

 

 

若干のタイムラグを経て、ネタの交代。

 

 

トランプのカードを回収して配り直す、みたいな。

 

 

ハンバーガーもやたら美味しかったんだけど、ポテトがまた、やたらめったら美味しくて、

 

 

シェアのポテトをこっそり、パクパクずっと食べてた。

 

 

あのチーズかかってたやつ、何であんな美味しいんだろうな。

 

 

この時点で、まだ誰の名前も、国籍も、よく分かっていなかった。

 

 

それは私だけではなく。

 

 

誰かが、たぶん、台湾の美人さんが

 

 

「皆の名前をここに書いて」って、

 

 

スマホのメモを回した。

 

 

「えーこれ、写メっていい?」

 

 

「あー私も」

 

 

なるほどなるほど。

 

 

私もそこに自分の名前を記入して、写真を撮らせてもらった。

 

 

でも、見知らぬ名前の並んだ画面は、やっぱり他人行儀で、

 

 

読み方も、そもそも誰がどの名前かも、結局よく分かんなかった。

 

 

「私の名前、必要とされてるんだろうか」なんて、いじけた事を考えながら、

 

 

ローマ字で書かれた自分の名前を見つめた。

 

 

実際、最初の一週間は誰からも(先生を除いて)私の名前を呼ばれなくて、

 

 

高1の時、2週間だけ行ったオーストラリアのホームステイでは

 

 

毎日毎日、不思議なイントネーションで名前を呼ばれてたのになぁ、

 

 

って、悲しかった。

 

 

ちなみにちなみに、私はこの日から、憑かれたように

 

 

「外国のハンバーガー」の虜になり、

 

 

一人で暇なときは、美味しいハンバーガー屋さんを探してさすらった。

 

 

そう。あの日、食べた、あのハンバーガー。

 

 

悲しいかな、私は病的な方向音痴で、あの日、皆に連れてってもらったハンバーガー屋さんは、学校からそんなに遠くないにも関わらず、

 

 

その後、一回しかたどり着けなかった。

 

 

一回だけ、適当に歩いて、迷子になったら、まぐれでたどり着いた。

 

 

でも不思議なことに、一人でのびのび快適に食べたら、

 

 

あの日ほどの感動は無かった。

 

 

美味しいは、美味しいんだけど。

 

 

一人だと、すぐ食べ終ってしまうし。

 

 

なんとも、うまくいかないものだ。本当に。変なの。

 

 

1人で食事すると、

 

 

「マダム」とか「レディー」とか

 

 

店員さんに、ちやほやしてもらえるのは、楽しいんだけどね。

 

 

 


 

 

 

今日はロンドン2日目、前半戦のお話でした。

 

 

続きは、また今度。

 

 

やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ

 

 

 


 

 

 

あの日 食べたハンバーガーも

あの時 泣いたレミゼラブルも

いつか君と もう一度

それが 私の小さな夢です

ロンドンで王子様に会いました#2

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前回までのあらすじ

 

やまいぬの運命はルームメイト「ハルカ」に託された!

 

 

 

 

ちょっと前回は、ちゃんとやろうとして、プロットとか用意したら、思った以上にカチコチのへたくその私小説みたいになったから、

 

 

今回は、今まで通り、適当に脱線しまくりながら、楽しく書いていくよ!!!

 

 

ペースなんか気にしないよ!!!だから王子様はしばらく登場しないよ!!

 

 

さて。

 

 

「うわあ、久しぶりに日本語喋った~!」とハルカは笑った。

 

 

ハルカは黒いレザージャケットにスラリと長いジーンズをはいていて、

茶色のストレートヘア。近づきがたくなりそうなオシャレ美人のようで、ちらりとのぞく白い出っ歯が、親しげだった。

 

 

ロンドンでの生活に馴染んでいる、楽しんでいる、留学生の女の子って感じ。

 

 

そのチャーミングな出っ歯と、少し舌ったらずでゆっくりな話し方。

 

 

うわあああん良い人そう!!! 

 

 

私は泣いた。ちょっと泣いた。

 

 

あぁ、第一印象って大事だ。私は第一印象、絶対主義である。

 

 

ファーストインプレッションが「いい人そう!」「あ、私、この人と仲良くなれそう!」と思った瞬間に、私は警戒心を全解除する。

 

 

きゃっほう。好きぃ!!!めっちゃ好きぃ!!!

わーいわーい!!!聞いて聞いて!!!あのねあのね!!!

 

 

なんだろう。一瞬で、なついてしまう。犬だ、犬。

 

 

私の中の柴犬が尻尾をブンブン振り出してしまう。

 

 

何でも私の長年の友達にもなると、この尻尾は可視化されるらしい。

 

 

「かわいくて、かわいそう」by友人

 

 

しゃらくせぇわ。

 

 

ちなみに、ファーストインプレッションがよろしくないと、事態は逆転する。

 

 

私の中の犬がうなりだす。

 

 

「グルルルルル……」

 

 

ワンピースのチョッパーが人見知りで、初対面を前にすると、物陰に隠れてしまう(いつも隠れ切れてないけど)、あの感じに近い。

 

 

心の扉という扉をシャットダウンする。コンビニ店員さんからお釣りもらう時の方がよっぽど愛想がいいくらいだ。

 

 

「この人ニガテ」ラベルが貼られた瞬間に、ソイツはやまいぬ一族の敵である。

 

 

ともあれ、私はハルカに一目で懐いた。

 

 

そして、リビングの(恐らく)フランス人の二人と仲良くしようとしたのに、できなかったこと、抹茶のポッキーを断られてしまったこと、そもそもポッキーがハルカのポッキーと被ってしまった事なんかをワイワイ喋った。

 

 

「あはは。そうだよね~日本と言えば抹茶だよね~。私も渡した時、反応イマイチだったよ~。なんかね、抹茶って、知ってる人は知ってるけど、知らない人にとっては『グリーンティー??? ナニそれ苦そう』ってなるみたい」

 

 

そうなのか。知らんかった。私はてっきり、「オーウ、ジャパーン、イェーイ!」みたいになると思ってたや。

 

 

私はこの「大先輩」に甘え倒した。

 

 

「あのね、私、方向音痴でね、もし良ければ、駅までの道、教えてくれない!?」

 

 

英語だろうが、日本語だろうが、私はいつだってコミュ障全開である。

 

 

「いいよー。あ、じゃあ、一緒に今から駅行こっか~」

 

 

ええええええ。天使いいいい。

 

 

ハルカ天使いいいいいい。好きぃぃぃぃ!!!!ってなった。

 

 

というわけで、私たちはコートを羽織って、夜の街に繰り出した。

 

 

日本のようで、日本じゃない。

 

 

東京のようで、東京じゃない。

 

 

車が行きかう夜の大通りをオレンジの街灯が、ショーウィンドウの白い光が、照らし出す。

 

 

色んな色が、そこらじゅうに灯っている。石造りとビルの並び。

 

 

ハルカと一緒に横断歩道を走って渡った。

 

 

「ここでは、赤信号でも、どんどん渡るの。そのうち慣れるよ」

 

 

伸びる二つの道路の真ん中、時計台が立っている。その向こうにはさらに大きな交差点。

 

 

緑が光った。青が光った。

 

 

明るくて、暗い。

 

 

それは夜の中の明かり。

 

 

「綺麗だなぁ」

 

 

これが初めて見たロンドンの夜だった。

 

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そこから、私は背の高いハルカの横を少し大股で並んで歩いた。

 

 

駅までの道すがら、ハルカは沢山喋ってくれた。

 

 

あそこのスーパーは安くて、おいしい。

 

 

あのコンビニは高いから、だめ。

 

 

あそこの角には、雑貨屋さん。

 

 

向こうの角では、洋服が売ってる。

 

 

ふんふん。ふんふん。

 

 

私は「大先輩」の話をドキドキしながら聞いていた。

 

 

「ほら、ここが駅だよ」

 

 

学生寮から徒歩20分。急いで歩けば15分。

 

 

その駅の名前はAngel

 

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

私は思った。

 

 

「きっと、楽しい。大丈夫だ、私」

 

 

だって夜は素敵で、隣に頼れる人がいて、駅は天使だ。

 

 

だから、大丈夫だ。

 

 

その後、私たちはハルカのお勧めのお店で夕食をとるために周り道した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ここのお店はチキンが有名なんだってー」

 

 

私たちは明るい店内のカウンターから少し離れたところに座った。

 

 

なるほど、チキンか。

 

 

メニューをのぞき込むと、

 

 

「ウ。英語だ……」

 

 

そりゃそうなんだけども。そうなんだけどさ。

 

 

あっちのお店のメニューには、写真がない。

 

 

つくづく日本ってのは、便利な国だな、なんて。

 

 

づらづら文字が並んでいるだけで、どんな料理かは名前と短い説明のみで推測しなきゃいけない。

 

 

読めないことはないんだ。

 

 

分からないんだ。

 

 

Wingsってなんだ…??

 

 

羽…??  1/2と1/4ってどれくらい違うんだ…??

 

 

隣の人たちが頼んでいるのはメニューのどれとどれのセットなんだ?

 

 

 

オーダーは呼ぶのか、行くのか。

 

 

頭の中をハテナだらけにしていると、ハルカが言った。

 

 

「うーん。よく分からないから、私、聞いてくるね」

 

 

えええええ。ハルカあああああ。嘘だあああああ。先輩いいいいいい。

 

 

ハルカの英語はけっして上手くない。私とどっこいどっこいだ。

 

 

それでもちゃんと聞いて話している。きょどきょどしない。

 

 

ほえー。

 

 

聞くと、ハルカはすでに3週間いるという。

 

 

で、次の日曜にはもう日本に帰るそうな。

 

 

へえー。

 

 

オーダーはカウンターでするらしいよ~と言いながらハルカは戻ってきた。

 

 

そこで、上着だけ置いて、カウンターに行き注文することになった。

 

 

「あの、このbluemoonっていうの頼みたいんですけど」

 

せっかくだからお酒飲みたいよねーとさっき盛り上がったはいいものの、私は種類を全然知らない。

 

 

私はその場で目に入った棚の中の青い瓶を指さして言ってみた。

 

 

すると何だか知らないが、定員さんはイエスと言ってくれない。

 

 

テンパっていたら、ハルカが助けてくれた。

 

 

「グラスマークの下に文字が書いてあるでしょ。なんか、それがお酒の名前で、そこから選ばなきゃいけないみたい」

 

 

見ると、三角やら四角やらのグラスのマークが6種類ぐらい書いてあって。そこにそれぞれ小さい文字でお酒の名前が書いてある。……ようだ。

 

 

私はもう迷う余裕もなく、その中のナントカbeerというのを適当に選んだ。

 

 

 

 

 

 

そこから席に戻って、しばらく待つとお酒と料理が運ばれてきた。

 

 

濃い色をした瓶のお酒二つと、私はチキンとサラダとマッシュポテト、

 

ハルカはチキンとサラダとポテトフライだった。

 

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「あーハルカが注文してた『チップス』とポテトの事だったのか…」

 

 

マッシュポテトだって、美味しいから良いよ、別に。

 

 

私はもっきゅもっきゅ山盛りのマッシュポテトを頬張った。

 

 

私たちは沢山話した。

 

 

ハルカがめちゃめちゃ頭いい大学で、しかも運動部のマネージャーをしている、という話、彼氏はその部のマッチョな男子だって話、

 

 

私はチキンをむしゃむしゃ、マッシュポテトをむしゃむしゃ、

 

 

「ビールが美味しいなんて初めて思ったなあ」

 

 

とか考えながら、聞いていた。

 

 

それは旅先のテンションなのか、お酒が入ったからか、同じ日本人だからか、

それとも、ちょっとだけ頑張る気持ちがあったのか、

 

 

とにかくその夜は、一気にお互いの事を喋り倒して帰った。

 

 

「私、ルームメイトの子と外でご飯食べたの初めてだったから、嬉しいなー」

 

 

それを聞いて、私もちょっと嬉しくなった。

 

 

 

 

部屋に着いた時、私は向かいのベッド、上段の子に話しかけた。

 

 

「そういえば、今日、やまいぬの他にも新しく入ってきた子がいたよー。

 

 

その子、けっこう英語できるみたいだし、明日一緒に学校行けばいいんじゃない?」

 

 

その子はすでにその時、ベッドでゴロゴロしていて、邪魔するのが申し訳なかったけど、頑張って、明日一緒に行かないか誘ってみた。

 

 

上手く喋れなかったから、ハルカも一緒に喋ってくれた。

 

 

すると、どうやらその子は、同じ語学学校のニューヨーク校についこの間まで通っていたらしくて、その時の友達がこちらにもいるという。

 

 

明日はその子と朝ごはんを食べてから一緒に行くんだと。

 

 

その会話で私はその二人が、どこで朝食を食べるのか、とか、私はお邪魔じゃないか、とか頭の中がぐるぐるしたけど、

 

 

そんな事言ってる場合じゃない。

 

 

私はとにかく朝の7:30に二人と一緒に学校へ行く(連れてってもらう)

という約束をした。

 

 

不安だったけど、その子は私よりも年下で、明るい話しやすい子で、

とにかく明日の初登校がなんたかなりそうで、ホッとした。

 

 

ネボスケの私は、明日こそは絶対に遅刻しちゃいけない、と強く思って、

その日はシャワーを浴びて、さっさとベッドに潜った。

 

 

実際、くたくただったし。

 

 

でも、これが油断だった。

 

 

せめて最低限の荷物ぐらいは整理しておけば良かった。

 

 

整理して、ちゃんと明日の支度をすれば良かった。

 

 

慣れた大学の1限にひょいと行くのとはワケが違う。

 

 

なのに私は嬉しくて、ほっとして、完全に油断した。

 

 

これが後々、地獄の引き金になる。フラグ、というやつだ。

 

 

そんな事になろうとはつゆ知らず、私はすぐに寝てしまい、

朝はこの寝坊魔の私にしては、7:00にはちゃんと起きた。

 

 

と言っても。出発まで30分しかない。

 

 

いつもの倍速で朝の支度をした。

 

 

女の子はすでに起きていて、聞くと、どうやら朝ごはんはやめたらしい。

 

 

だから、そのまま7:30になったら、まっすぐ学校に行く、と。

 

 

私は支度している時、頭の中は「迷惑かけちゃいけない、急げ急げ」だったので、色々なものをバッグに入れるのを忘れた。

 

 

学生寮から最寄り駅までの地図

(かさばるし、昨日連れてってもらったから分かるだろう、と調子乗った)

 

折り畳み傘(まだスーツケースから出してなかった)

 

ポータブルWi-Fi(部屋の充電器にさしたまま置いてきた)

 

 

あーあ。愚かなる初日の私よ。覚悟しとけよ。

 

 

そこから、ぎりぎり支度が終わって、外にでると、

黒のタイトなワンピースを着た金髪の女の子が立っていた。

 

 

ルームメイトの子はフレンドリーな子だったけど、その子は、なんとなく話しかけづらかった。

 

 

挨拶もそこそこに私たちは歩き出した。

 

 

前に二人、その後ろに私。

 

 

二人が喋っている間、私は黙って街の景色とかひたすら見てた。

 

 

街の景色と、二つ並ぶストレートとカールの金髪を見ていた。

 

 

駅に着いて、オイスターカードという、日本で言うスイカPASMOを手伝ってもらいながら買った。

 

 

黒ワンピースの子が機械の操作を手伝ってくれたんだけど、私の操作や下手な英語でもたもたして、申し訳ないなぁと思ってたら、なんと、後ろのお兄さんに舌打ちされて、小声で何か言われた。

 

 

うううう。

 

 

ホームで電車を待っている間、私は何とか話に入ろうとして、

さっき後ろのお兄さんが怖かった事を話すと、

 

 

ルームメイトの子が「えー最悪だね~」と返してくれたけど、それで終わってしまって、

 

 

どうしようどうしようと慌てて、貼ってあったゼルダの伝説のポスターを指さして、

 

 

「このゲーム知ってる? Nintendoって日本の会社なんだよ」

 

 

って言ったら、黒ワンピの子がボソリと

 

 

「私、ゲーム全然やらないから分からない」

 

 

と言われて、あっという間に、会話が終わってしまったし、

 

 

私もしょげてしまった。

 

 

電車の中は混んでいて、けっこう、揺れる。

 

 

混んでるから3人、顔を合わせるように立ったんだけど、

 

 

やっぱり二人が喋って、私は聞き取れないから、入れない。

 

 

多分、表情とかから「電車、まじ揺れるね」とか言ってるんだろうと思って、

 

 

それっぽい顔で小さくうなづいておいた。一応。その場にいる人として。

 

 

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学校を見た時、驚いた。

 

 

もっと、学校学校してるかと思ってたら、そこは手押しの門をくぐると、

 

 

石造りの中庭と建物があった。

 

 

中庭には、卓球台やら、ビリヤード台、ボードサッカーの台とかが置いてあった。

 

 

中に入って、カフェテリアに行くと、

 

 

いきなり騒がしい日本語が耳に入ってきた。

 

 

どうやら新入生は皆、まずはこのカフェテリア待機のようで、

その中の一番大きなグループが日本人の女の子たちだった。

 

 

大きな声で興奮しながら、もの凄い喋っている。

 

 

「やだなぁ」とこっそり思いながら、

 

 

私は二人の後について、レジで軽食を買った。

 

 

私はスーパーフルーツカップというのを頼んだ。

 

 

カップの中にブルーベリーとかメロンとかイチゴやらが入っているやつ。

 

 

フォークでつっつきながら、振り返ると、私の席は無かった。

 

 

二人は、さらに他の友達とすでに盛り上がって座っていた。

 

 

どうしたものかと思っていたら、ルームメイトの子が、気を聞かせて、

 

 

「あそこの空いてる席、こっちに持ってきちゃいなよ」

 

 

と言ってくれた。

 

 

居場所を確保したものの、やっぱり話には入れなくて、

 

 

私はフルーツカップを丁寧に食べた。

 

 

ちょっとすまして、ブルーベリーとか食べた。

 

 

こなれた感じなんか出しながら。

 

 

そんなの誰も見ちゃいなかっただろうけど。

 

 

そして、私が最後のオレンジを食べ終った時、ついに先生に呼ばれた。

 

 

「では、皆さん。イントロダクションを始めるので移動してください」

 

 

ロンドン2日目。月曜日。語学学校、初日がこうして始まったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は、ここまで。

 

 

続きは、また今度。

 

 

やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ

 

 

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会いたい と 会いたくない の挟間で迷子

会いに来て 会いに行く

まぁ そうは言っても会えませんから

私は明日も頑張って生きるよ