やまいぬは書かねばと思った

ロンドンで王子様に会いました。

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そろそろ観念して、ブログを書こうと思う。

 

なんで書きたくなかったかと言えば、まず6週間の留学で情報量が多すぎて、それを文字にするのがしんどかったから。もう一つは、このブログに絵本みたいな感じで挿絵を入れたかったんだけど、自分の画力に悶々として作業が進まなかった。

 

自分の画力が向上するのを待っていたらキリがないし、いつだって頭の中にあるうちは名作だ。逃げ回っていてはいけないと思った。

 

そう。私は逃げたいのだ。解けてしまった魔法を懐かしむ胸の痛みから。散らかった代わり映えのない自分の部屋とそこから始まる毎日に。

 

だって、私はここで、この部屋で、この国で、生きて行くらしいじゃないか。

今までも、これからも。うっすらと、心に積もりゆく、悲しさのような不安。

 

どうせ、元に戻るなら、知らない方が良かったんじゃないか。知りたくなかった。でも、知っている。知ってしまった。あー本当に、手元に残ったのは沢山の写真と動画、頭で鳴り響いて止まらない、君が愛してやまないお気に入りの歌。スペイン語だから、ワンフレーズしか口ずさめない。

 

そうなのだ。私は英語がへたくそだ。へたくそで、へたくそで、臆病だ。

あんなに大好きになったのに、私はついに何も言わずに帰国した。

 

君も最後まで言わなかった。

I love youも。I like youさえ。

 

その代わり、君は何度も言った。

 

 

「僕は君に自信を持ってほしい」

 

「いいかい。君は本当に美しい人なんだよ」

 

「僕は」

 

I believe in you.

 

何を。

 

何を信じるっていうんだ。

 

私なんかの、何を。

 

こんな私の、何を。

 

いやになっちゃうなぁ。

 

私は、やっぱり泣き虫だ。

 

恋を諦めるのは得意だったはずなのに。

 

とっくに慣れたはずなのに。

 

やまいぬは、泣いても可愛いなぁ」

 

ばかじゃないのか。

 

Kawaii~~やまいchannnn!!

 

ばかだ。

 

omg!!!  I really miss you, Yamainu chan!

 

本当に。

 

「聞いてよ、やまいぬちゃん!」

 

 

何でかなぁ。

 

 

「君が帰ってから、学校行っても、家にいても、パーティー行っても、日本語勉強してる時も」

 

ばかだなぁ。

 

「君の『あはは』って笑う声が恋しいよ!

君の『やっぱり忘れた』って言う口癖も恋しいよ!

本当に本当に、君が恋しいよ! どうしよう!!!」

 

ばか、というか、あほなんじゃないか。

 

やまいぬが大学生活を楽しむことを願うよ! 君ならできるよ! 僕知ってるもん!

あと、君は皆に言えるよ!」

 

うん。あほだ。間違いなく。

 

「『私はこんなに美しい人と話すチャンスを持ってます!』って。皆、羨ましがるよ!」

 

こらBeautifulを大文字にするんじゃない。

 

困ったなぁ。

 

ピカチュウのぬいぐるみ抱きしめる君を見たら笑っちゃったよ。

 

あーあ。敵わないなぁ。

 

そうなんです。

 

私はロンドンで王子様に会いました。

 

オタクで陽気でヘンテコな人。

 

変態で優しい、めちゃくちゃ面白い人。

 

あーあ。

 

大好きになってしまった。

 

そんな彼とのお話と、私の留学の話をのんびり書いてみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

私は春休みの6週間、ロンドンで語学学校に通っていた。

 

 

ぼやぼやした私なので、留学に行くこと自体、年末に慌てて決めて、滑り込みで申し込んだ。

そんな私が優雅に素敵に器用に異国の地で暮らしていけるはずがない。

最初の一週間は地獄だった。

 

「あれ、私、死ぬんじゃないかコレ?」って文字が何度、頭をよぎったか分からない。

 

1週間目も2週間目も、そりゃあ沢山色んな事があったけど、ここでは割愛する。

 

 

彼と会ったのは3週間目だった。

 

 

本当は2週間目で、私たちのクラスに彼はすでにいたんだけど、全く話さなかった。

 

最初の印象は、あんまり良くなかった。

 

だって、なんか嫌な感じの奴だった。

 

フランス人の背の高い女の子と仲が良くて、二人はよく並んで授業を受けていた。それは別に構わないけど、この二人が「学級委員」みたいな感じでいけ好かなかった。

 

ちなみに彼は、あー、じゃあ、ミュウ君にしとこう。ポケモンのミュウが好きだから。ミュウ君は外国人のくせに割と背は小さい。156の私より、ちょいと高いくらいだ。

 

その凸凹コンビが、授業中、「優等生」然をするのだ。皆が問題を解いてても、2人はさっさと解き終わって、腕を組んでぶすっとしている。そして、答え合わせの時間になると、先生がまだ何も言ってないのに、挙手したり、いきなり自分の解答を読み上げたりする。

 

先生が他の子を指名しても、その子が答えるのが遅いと勝手に答えを言ってしまう。それで、先生に注意されると「おっと失礼」って気取って、二人で顔を見合わせて笑う。

 

私が一番、むっとしたのは、

他の子たちが「いや、これムズいな。わかんねぇ」みたいにコソコソ話してたら、それを聞いて、ミュウが「ハイ。これ答えだよ」ってすまして、自分のプリントを「ほらよ」みたいに、よこそうとした。彼らは「いや、それは遠慮しとくよ」って断ってたけど。

 

実際、彼は優等生だったのだろう。

でも、私は好きになれなかった。すごく苦手だった。特にその時の顔とか態度が印象に残っていたし。

 

でも、ある時、私がテキスト忘れて、たまたま隣に座ってたミュウ君に見せてもらうことになった。そもそも私は英語聞き取れないし、授業は中高で散々やった文法問題ばっかりだし、クラスはフランス人が多くて、しょっちゅう母国語で喋って、固まって、そのクラスは居心地が悪かった。なんか皆、鼻ピアスとか、露出とか凄くて、チャラかったし。

 

ミュウと仲良かった女の子は、同じ国出身だったけど、彼らが嫌いだと言っていた。

 

この前もペアワークで隣になったフランス男が明らかに、うっとうしそうな、めんどくさそうな態度で、作業中も他の子に「参っちゃうぜ」みたいな感じで話しかけてばっかりで、すごく嫌な思いをした。

 

だから、今回のミュウ君の隣も「あー早く、授業終わらないかなあ」って憂鬱な気持ちで座っていた。そういや、ミュウ君はフランス人じゃないの?彼、フランス語喋ってるじゃないって、女の子に聞いた時、「彼はフランス人じゃないけど、フランス語喋れるの」とか言っていた。その時は「はいはい、頭いいんですね、すごいすごい」ぐらい。ちぇってなものだ。

 

そしたら、急にミュウが話しかけてきた。

 

「ねぇ、この問題、答えどっちだと思う?」

 

それは私の苦手なリスニング問題で、自信が無かったから、適当に「あー多分Aじゃないかな」とか答えた。そしたら、彼はAに○をつけた。いやいや、待て待て、そんなするっと信じられても困る。あわあわしたんだけど、「いいからいいから」って、ケラケラ笑う。

 

私は急いで他の問題にも目を向けて、ぎりぎり聞き取れた単語で答えられるやつを言った。

「あ~僕もそうだと思ったんだよね~~」

 

それから時間が余ったから聞いてみたら、彼はスイス人だった。

スパニッシュとフレンチ、両方、普段から使うらしい。

 

「でも僕、日本語も分かるよ」

 

「えっ本当」

 

「ほら、これ『つ』でしょ。で、これが『ぬ』」

 

ミュウはドヤ顔でノートの端にちょろちょろとミミズの這った二文字を書いて見せた。

 

『つ』と言われればそうも見えるけど、何か頼りないし、『ぬ』は『ぬ』っぽい何かだった。

 

でも、そのクラスで初めて笑ったのは、その時だったと思う。

 

答え合わせになった時、やっぱり1問目は間違ってたけど、2問目は合っていた。

そしたら、「イェーイ!!!ヤッタネーーーー!!!」みたいなテンションできゃっきゃしながら、ハイタッチしてきた。

 

なんだかいつものムスっとした顔と正反対だったから、面食らってしまったし、ちょっと恥ずかしかったけど、ハイタッチを返した。

 

それ以後、彼とは何度もハイタッチをすることになる。

 

彼の国では「チョカ!」というらしい。

 

あっけらかんと、何がそんなに楽しいのか知らんけど、

やたらウキウキしながら、「やまいぬ、チョカ!!」と、しょっちゅう彼は手を掲げた。

 

 

いつも彼は手を挙げるだけで、

私がもじもじしながら、そこに手をぽいっと重ねるのがお約束だった。

 

 

2週間目、土曜の朝、突然、先生に「なんかこのクラス解散することになったよ」って宣言された。

 

 

なんでやねん。そんな馬鹿なことあるか。

 

何でも、3月に入ってから、「卒業生」、つまり自分の国に帰る人が増えて、定員割れだそうな。生徒もびっくりしたけど、何より当の先生本人がびっくりしてた。

 

「いやぁ、ビビるよね~僕もさっき言われてさ~

まぁ、とにかく今日が最終日ってことでよろしく~~」

 

話によると、来週からは他のクラスに合流することになるらしい。

 

 

そうは言われたものの、何故か今日は人が少ない。

 

 

いや、少ないのは、そうなんだろうけど、異常に少ない。

 

 

先生も「おいおい、最後だってのに、なんで人少ないんだい?」

 

ってなったら、フランス人のチャラい子が言った。

 

「あー多分、皆、昨日パーティー行ってたんで、今頃寝てると思いますよ~」

 

 

えええええ。

 

 

 

何それええええ。

 

 

そういや昨日は緑の帽子かぶった人々がウロウロしていた。

 

 

あれはセント・パトリックス・デーとやらだそうで、

 

 

ただでさえ皆さん、パーティー大好きピーポーなのに、さらにはっちゃけまくったらしい。

 

 

何てこったい。

 

 

 

 

うーん。やっぱり、色々端折って書くと味気なくなるなぁ。

 

いや、1.2週間も色々あったんですよ。充電切れたiPhone片手に3時間夜の土砂降りのロンドンをしかも傘忘れて迷子になって死にかけた話とか、深夜の地下鉄でオネエのお二人に話しかけられたとか、日本の男子と一丁前にデートしたとか、マッチョの黒人にナンパされたとか、精神弱りすぎてテートモダンのギフトショップの絵本読んで、感涙してまとめ買いして、そこから何やかんやで今、美術学校に通うことになったとか、いや本当にどこに行っても女の人間関係は面倒くさいとかアラジン観に行ったら、うんこ漏らしそうになって、何やかんやで隣に座ってたお姉さんと仲良くなって2ショット撮ったとか。

 

 

ちょっと、焦らず、時間かかりますけど、

やっぱり1から、つまり初日から書いた方が良さげな気がしますね。

 

 

とにかく今日は、ここまで。

 

 

続きは、また今度。

 

 

やまいぬでした🐻

 


🐾🐾🐾🐾🐾🐾

 

笑顔で手を振り 見送る君を 忘れられない

頭を撫でて キスは頬に

「ダイジョーブ」って ヘタな日本語

優しい ずるい ありがと 大好き