やまいぬは書かねばと思った

ロンドンで王子様に会いました#2

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前回までのあらすじ

 

やまいぬの運命はルームメイト「ハルカ」に託された!

 

 

 

 

ちょっと前回は、ちゃんとやろうとして、プロットとか用意したら、思った以上にカチコチのへたくその私小説みたいになったから、

 

 

今回は、今まで通り、適当に脱線しまくりながら、楽しく書いていくよ!!!

 

 

ペースなんか気にしないよ!!!だから王子様はしばらく登場しないよ!!

 

 

さて。

 

 

「うわあ、久しぶりに日本語喋った~!」とハルカは笑った。

 

 

ハルカは黒いレザージャケットにスラリと長いジーンズをはいていて、

茶色のストレートヘア。近づきがたくなりそうなオシャレ美人のようで、ちらりとのぞく白い出っ歯が、親しげだった。

 

 

ロンドンでの生活に馴染んでいる、楽しんでいる、留学生の女の子って感じ。

 

 

そのチャーミングな出っ歯と、少し舌ったらずでゆっくりな話し方。

 

 

うわあああん良い人そう!!! 

 

 

私は泣いた。ちょっと泣いた。

 

 

あぁ、第一印象って大事だ。私は第一印象、絶対主義である。

 

 

ファーストインプレッションが「いい人そう!」「あ、私、この人と仲良くなれそう!」と思った瞬間に、私は警戒心を全解除する。

 

 

きゃっほう。好きぃ!!!めっちゃ好きぃ!!!

わーいわーい!!!聞いて聞いて!!!あのねあのね!!!

 

 

なんだろう。一瞬で、なついてしまう。犬だ、犬。

 

 

私の中の柴犬が尻尾をブンブン振り出してしまう。

 

 

何でも私の長年の友達にもなると、この尻尾は可視化されるらしい。

 

 

「かわいくて、かわいそう」by友人

 

 

しゃらくせぇわ。

 

 

ちなみに、ファーストインプレッションがよろしくないと、事態は逆転する。

 

 

私の中の犬がうなりだす。

 

 

「グルルルルル……」

 

 

ワンピースのチョッパーが人見知りで、初対面を前にすると、物陰に隠れてしまう(いつも隠れ切れてないけど)、あの感じに近い。

 

 

心の扉という扉をシャットダウンする。コンビニ店員さんからお釣りもらう時の方がよっぽど愛想がいいくらいだ。

 

 

「この人ニガテ」ラベルが貼られた瞬間に、ソイツはやまいぬ一族の敵である。

 

 

ともあれ、私はハルカに一目で懐いた。

 

 

そして、リビングの(恐らく)フランス人の二人と仲良くしようとしたのに、できなかったこと、抹茶のポッキーを断られてしまったこと、そもそもポッキーがハルカのポッキーと被ってしまった事なんかをワイワイ喋った。

 

 

「あはは。そうだよね~日本と言えば抹茶だよね~。私も渡した時、反応イマイチだったよ~。なんかね、抹茶って、知ってる人は知ってるけど、知らない人にとっては『グリーンティー??? ナニそれ苦そう』ってなるみたい」

 

 

そうなのか。知らんかった。私はてっきり、「オーウ、ジャパーン、イェーイ!」みたいになると思ってたや。

 

 

私はこの「大先輩」に甘え倒した。

 

 

「あのね、私、方向音痴でね、もし良ければ、駅までの道、教えてくれない!?」

 

 

英語だろうが、日本語だろうが、私はいつだってコミュ障全開である。

 

 

「いいよー。あ、じゃあ、一緒に今から駅行こっか~」

 

 

ええええええ。天使いいいい。

 

 

ハルカ天使いいいいいい。好きぃぃぃぃ!!!!ってなった。

 

 

というわけで、私たちはコートを羽織って、夜の街に繰り出した。

 

 

日本のようで、日本じゃない。

 

 

東京のようで、東京じゃない。

 

 

車が行きかう夜の大通りをオレンジの街灯が、ショーウィンドウの白い光が、照らし出す。

 

 

色んな色が、そこらじゅうに灯っている。石造りとビルの並び。

 

 

ハルカと一緒に横断歩道を走って渡った。

 

 

「ここでは、赤信号でも、どんどん渡るの。そのうち慣れるよ」

 

 

伸びる二つの道路の真ん中、時計台が立っている。その向こうにはさらに大きな交差点。

 

 

緑が光った。青が光った。

 

 

明るくて、暗い。

 

 

それは夜の中の明かり。

 

 

「綺麗だなぁ」

 

 

これが初めて見たロンドンの夜だった。

 

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そこから、私は背の高いハルカの横を少し大股で並んで歩いた。

 

 

駅までの道すがら、ハルカは沢山喋ってくれた。

 

 

あそこのスーパーは安くて、おいしい。

 

 

あのコンビニは高いから、だめ。

 

 

あそこの角には、雑貨屋さん。

 

 

向こうの角では、洋服が売ってる。

 

 

ふんふん。ふんふん。

 

 

私は「大先輩」の話をドキドキしながら聞いていた。

 

 

「ほら、ここが駅だよ」

 

 

学生寮から徒歩20分。急いで歩けば15分。

 

 

その駅の名前はAngel

 

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

私は思った。

 

 

「きっと、楽しい。大丈夫だ、私」

 

 

だって夜は素敵で、隣に頼れる人がいて、駅は天使だ。

 

 

だから、大丈夫だ。

 

 

その後、私たちはハルカのお勧めのお店で夕食をとるために周り道した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ここのお店はチキンが有名なんだってー」

 

 

私たちは明るい店内のカウンターから少し離れたところに座った。

 

 

なるほど、チキンか。

 

 

メニューをのぞき込むと、

 

 

「ウ。英語だ……」

 

 

そりゃそうなんだけども。そうなんだけどさ。

 

 

あっちのお店のメニューには、写真がない。

 

 

つくづく日本ってのは、便利な国だな、なんて。

 

 

づらづら文字が並んでいるだけで、どんな料理かは名前と短い説明のみで推測しなきゃいけない。

 

 

読めないことはないんだ。

 

 

分からないんだ。

 

 

Wingsってなんだ…??

 

 

羽…??  1/2と1/4ってどれくらい違うんだ…??

 

 

隣の人たちが頼んでいるのはメニューのどれとどれのセットなんだ?

 

 

 

オーダーは呼ぶのか、行くのか。

 

 

頭の中をハテナだらけにしていると、ハルカが言った。

 

 

「うーん。よく分からないから、私、聞いてくるね」

 

 

えええええ。ハルカあああああ。嘘だあああああ。先輩いいいいいい。

 

 

ハルカの英語はけっして上手くない。私とどっこいどっこいだ。

 

 

それでもちゃんと聞いて話している。きょどきょどしない。

 

 

ほえー。

 

 

聞くと、ハルカはすでに3週間いるという。

 

 

で、次の日曜にはもう日本に帰るそうな。

 

 

へえー。

 

 

オーダーはカウンターでするらしいよ~と言いながらハルカは戻ってきた。

 

 

そこで、上着だけ置いて、カウンターに行き注文することになった。

 

 

「あの、このbluemoonっていうの頼みたいんですけど」

 

せっかくだからお酒飲みたいよねーとさっき盛り上がったはいいものの、私は種類を全然知らない。

 

 

私はその場で目に入った棚の中の青い瓶を指さして言ってみた。

 

 

すると何だか知らないが、定員さんはイエスと言ってくれない。

 

 

テンパっていたら、ハルカが助けてくれた。

 

 

「グラスマークの下に文字が書いてあるでしょ。なんか、それがお酒の名前で、そこから選ばなきゃいけないみたい」

 

 

見ると、三角やら四角やらのグラスのマークが6種類ぐらい書いてあって。そこにそれぞれ小さい文字でお酒の名前が書いてある。……ようだ。

 

 

私はもう迷う余裕もなく、その中のナントカbeerというのを適当に選んだ。

 

 

 

 

 

 

そこから席に戻って、しばらく待つとお酒と料理が運ばれてきた。

 

 

濃い色をした瓶のお酒二つと、私はチキンとサラダとマッシュポテト、

 

ハルカはチキンとサラダとポテトフライだった。

 

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「あーハルカが注文してた『チップス』とポテトの事だったのか…」

 

 

マッシュポテトだって、美味しいから良いよ、別に。

 

 

私はもっきゅもっきゅ山盛りのマッシュポテトを頬張った。

 

 

私たちは沢山話した。

 

 

ハルカがめちゃめちゃ頭いい大学で、しかも運動部のマネージャーをしている、という話、彼氏はその部のマッチョな男子だって話、

 

 

私はチキンをむしゃむしゃ、マッシュポテトをむしゃむしゃ、

 

 

「ビールが美味しいなんて初めて思ったなあ」

 

 

とか考えながら、聞いていた。

 

 

それは旅先のテンションなのか、お酒が入ったからか、同じ日本人だからか、

それとも、ちょっとだけ頑張る気持ちがあったのか、

 

 

とにかくその夜は、一気にお互いの事を喋り倒して帰った。

 

 

「私、ルームメイトの子と外でご飯食べたの初めてだったから、嬉しいなー」

 

 

それを聞いて、私もちょっと嬉しくなった。

 

 

 

 

部屋に着いた時、私は向かいのベッド、上段の子に話しかけた。

 

 

「そういえば、今日、やまいぬの他にも新しく入ってきた子がいたよー。

 

 

その子、けっこう英語できるみたいだし、明日一緒に学校行けばいいんじゃない?」

 

 

その子はすでにその時、ベッドでゴロゴロしていて、邪魔するのが申し訳なかったけど、頑張って、明日一緒に行かないか誘ってみた。

 

 

上手く喋れなかったから、ハルカも一緒に喋ってくれた。

 

 

すると、どうやらその子は、同じ語学学校のニューヨーク校についこの間まで通っていたらしくて、その時の友達がこちらにもいるという。

 

 

明日はその子と朝ごはんを食べてから一緒に行くんだと。

 

 

その会話で私はその二人が、どこで朝食を食べるのか、とか、私はお邪魔じゃないか、とか頭の中がぐるぐるしたけど、

 

 

そんな事言ってる場合じゃない。

 

 

私はとにかく朝の7:30に二人と一緒に学校へ行く(連れてってもらう)

という約束をした。

 

 

不安だったけど、その子は私よりも年下で、明るい話しやすい子で、

とにかく明日の初登校がなんたかなりそうで、ホッとした。

 

 

ネボスケの私は、明日こそは絶対に遅刻しちゃいけない、と強く思って、

その日はシャワーを浴びて、さっさとベッドに潜った。

 

 

実際、くたくただったし。

 

 

でも、これが油断だった。

 

 

せめて最低限の荷物ぐらいは整理しておけば良かった。

 

 

整理して、ちゃんと明日の支度をすれば良かった。

 

 

慣れた大学の1限にひょいと行くのとはワケが違う。

 

 

なのに私は嬉しくて、ほっとして、完全に油断した。

 

 

これが後々、地獄の引き金になる。フラグ、というやつだ。

 

 

そんな事になろうとはつゆ知らず、私はすぐに寝てしまい、

朝はこの寝坊魔の私にしては、7:00にはちゃんと起きた。

 

 

と言っても。出発まで30分しかない。

 

 

いつもの倍速で朝の支度をした。

 

 

女の子はすでに起きていて、聞くと、どうやら朝ごはんはやめたらしい。

 

 

だから、そのまま7:30になったら、まっすぐ学校に行く、と。

 

 

私は支度している時、頭の中は「迷惑かけちゃいけない、急げ急げ」だったので、色々なものをバッグに入れるのを忘れた。

 

 

学生寮から最寄り駅までの地図

(かさばるし、昨日連れてってもらったから分かるだろう、と調子乗った)

 

折り畳み傘(まだスーツケースから出してなかった)

 

ポータブルWi-Fi(部屋の充電器にさしたまま置いてきた)

 

 

あーあ。愚かなる初日の私よ。覚悟しとけよ。

 

 

そこから、ぎりぎり支度が終わって、外にでると、

黒のタイトなワンピースを着た金髪の女の子が立っていた。

 

 

ルームメイトの子はフレンドリーな子だったけど、その子は、なんとなく話しかけづらかった。

 

 

挨拶もそこそこに私たちは歩き出した。

 

 

前に二人、その後ろに私。

 

 

二人が喋っている間、私は黙って街の景色とかひたすら見てた。

 

 

街の景色と、二つ並ぶストレートとカールの金髪を見ていた。

 

 

駅に着いて、オイスターカードという、日本で言うスイカPASMOを手伝ってもらいながら買った。

 

 

黒ワンピースの子が機械の操作を手伝ってくれたんだけど、私の操作や下手な英語でもたもたして、申し訳ないなぁと思ってたら、なんと、後ろのお兄さんに舌打ちされて、小声で何か言われた。

 

 

うううう。

 

 

ホームで電車を待っている間、私は何とか話に入ろうとして、

さっき後ろのお兄さんが怖かった事を話すと、

 

 

ルームメイトの子が「えー最悪だね~」と返してくれたけど、それで終わってしまって、

 

 

どうしようどうしようと慌てて、貼ってあったゼルダの伝説のポスターを指さして、

 

 

「このゲーム知ってる? Nintendoって日本の会社なんだよ」

 

 

って言ったら、黒ワンピの子がボソリと

 

 

「私、ゲーム全然やらないから分からない」

 

 

と言われて、あっという間に、会話が終わってしまったし、

 

 

私もしょげてしまった。

 

 

電車の中は混んでいて、けっこう、揺れる。

 

 

混んでるから3人、顔を合わせるように立ったんだけど、

 

 

やっぱり二人が喋って、私は聞き取れないから、入れない。

 

 

多分、表情とかから「電車、まじ揺れるね」とか言ってるんだろうと思って、

 

 

それっぽい顔で小さくうなづいておいた。一応。その場にいる人として。

 

 

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学校を見た時、驚いた。

 

 

もっと、学校学校してるかと思ってたら、そこは手押しの門をくぐると、

 

 

石造りの中庭と建物があった。

 

 

中庭には、卓球台やら、ビリヤード台、ボードサッカーの台とかが置いてあった。

 

 

中に入って、カフェテリアに行くと、

 

 

いきなり騒がしい日本語が耳に入ってきた。

 

 

どうやら新入生は皆、まずはこのカフェテリア待機のようで、

その中の一番大きなグループが日本人の女の子たちだった。

 

 

大きな声で興奮しながら、もの凄い喋っている。

 

 

「やだなぁ」とこっそり思いながら、

 

 

私は二人の後について、レジで軽食を買った。

 

 

私はスーパーフルーツカップというのを頼んだ。

 

 

カップの中にブルーベリーとかメロンとかイチゴやらが入っているやつ。

 

 

フォークでつっつきながら、振り返ると、私の席は無かった。

 

 

二人は、さらに他の友達とすでに盛り上がって座っていた。

 

 

どうしたものかと思っていたら、ルームメイトの子が、気を聞かせて、

 

 

「あそこの空いてる席、こっちに持ってきちゃいなよ」

 

 

と言ってくれた。

 

 

居場所を確保したものの、やっぱり話には入れなくて、

 

 

私はフルーツカップを丁寧に食べた。

 

 

ちょっとすまして、ブルーベリーとか食べた。

 

 

こなれた感じなんか出しながら。

 

 

そんなの誰も見ちゃいなかっただろうけど。

 

 

そして、私が最後のオレンジを食べ終った時、ついに先生に呼ばれた。

 

 

「では、皆さん。イントロダクションを始めるので移動してください」

 

 

ロンドン2日目。月曜日。語学学校、初日がこうして始まったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は、ここまで。

 

 

続きは、また今度。

 

 

やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ

 

 

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会いたい と 会いたくない の挟間で迷子

会いに来て 会いに行く

まぁ そうは言っても会えませんから

私は明日も頑張って生きるよ