ロンドンで王子様に会いました#4
前回までのあらすじ
→新入生の皆さんとハンバーガー食べた
今回は、いつもより少しだけ写真多めの!!予定!!だよ!!!
何はともあれ、ハンバーガーを食べ終って、皆でぞろぞろ外に出た。
私たちがこれから通うことになる語学学校は、ロンドンのど真ん中にあって、
徒歩で国会議事堂とかロンドンアイとか行けるようなとこだった。
てなわけで、さっそく皆で行ってみましょうってことになり。
と言っても、私は正直、ここら辺の記憶が曖昧だ。
自分がくっついて歩いてる皆さんの名前もいまいちわからない、
自分がこれからどこに向かって歩くんだか、何を見に行くんだかも、
その時は、よく分かっちゃいなかった。
しばらく経ってから、
「あ、あの時観たあれが国会議事堂か」
「あれがナショナルギャラリーだったのか」
とか、ガイドブックやら見て理解した。
いまいち感慨に欠けるから、改めて自分でもう一回行ったりしたし、
そもそも近所だから、後日、他の人たちと、
今度はちゃんと仲良くなった友達と行く機会があって
良かったなあ、って話がここで書けるのは、まだまだ先なんだけどね。
何はともあれ書いていきましょう。
最初に向かったのはロンドンアイ。
ロンドンで一番有名な大きい観覧車だ。
卵みたいな形のカプセルがゆっくり回っている。
あー、そういや、1回も乗らないで帰ってきたなあ。
そうだ、この日はどんより曇天で、雨が降ったり止んだりしてた。
まさに私の心模様そのままだ。
私たちはロンドンアイに続く川沿いの道をずっと歩いてたんだけど、
目の前にはけっこういい景色が広がっていて、
川の向こうには、私だって聞いたことがあるビッグベンだって見えるのに、
どうしてだろう、私はやっぱり一人ぼっちで歩いていた。
皆の輪の中に入れなくて、
でも、景色の写真ばかりも悲しいから、
無理やりはしゃいで、
「ねぇ、撮ってくれる?」だなんてさ。
ここら辺は、ただただ所在なく、ぽつんと歩いてた気がする。ひたすら。
聞こえないし、聞いてもらえなかった。
一緒にいるのに、一緒にいない。
私の隣に、誰も並んで歩かない。
うーん。悲しかったなぁ。
その後は橋を渡って、ビッグベンの近くまで行って、また写真を撮った。
川の反対側から向こうのロンドンアイが見える。
台湾の美人さんが、何やらケータイを見てはしゃいでいる。
ちらりとのぞくと、
女の子二人がカメラに背を向けて、
ロンドンアイに二人で作ったハートをかざしている。
多分、カップルの定番ポーズか何かなんだろうな。
台湾の美人さんと韓国のお洒落さんが二人でそれをやろうとするのを私は何回か手伝った。
勿論、私は撮影係だったけど。
でも、その後、私があんまりしょぼんとした顔をしてたのか、
「一緒に写ろうよ」と言われて、
二人とそれぞれ2ショットを撮った。
撮った写真を見たら、ちょうど強い風が吹いてしまって、
私の髪の毛はライオンみたいになっていた。
あらら。
私が一人で歩いてたのは、
まず、私が引っ込み思案で上手く馴染めなかったのが大きいけど、
もう一つは、皆の歩くスピードが、てんでばらばらだったからだ。
仲良しの台湾美人さんと韓国お洒落さんは、二人で足取りも軽く
すたすた歩くけど、
フランスとスペインの背の高い二人の美人さんが、めちゃめちゃマイペースだった。
気づくと、遥か後ろで撮影会をしている。
皆がどんなに先を歩いて、見えなくなりそうになろうがお構いなしだ。
スペインの美人さんがモデルさんみたいにポーズとったら、
後ろで子ども連れのパパさんがこっそり真似してたのを、たぶん、気づいたのは私だけ。
橋を全員、渡り終えた時、皆で電話ボックスの前で写真を撮った。
皮肉なことに、この写真がけっこう素敵に撮れている。
「留学で友達沢山できました!」みたいなね。
ちょうどSNSにあげると、いかにも映えそうな、そんな写真。
一見すると、本当に、とっても素敵な写真なんだけど、
写っている私の顔が、何とも言えない。
分かるよ。当時の私よ。
けっして社交的ではない私にしては、あの時、けっこう頑張ってたと思うよ。
出来上がった写真の私は、少しでも恰好よく写ろうと思って、コートの前をわざわざ開けて写ったんだけど、
何かちぐはぐな感じになってしまって、おまけに深い赤と中に着ていた深緑の相性が最悪だった。
うう。悲しい。
この写真にショックを受けた私は、もともとあんまり好きじゃなかったこのコートを、
ますます嫌いになってしまって、それ以後、あんまり着なかった。
ごめんね、お母さん。
だって、皆、お洒落で、美人で、気まずかったんだ。
防寒ばっちりのでっかいコートが。
おまけにこの時、私はスマホを、雨に濡れた道路に落っことしてしまうという失態を犯した。
外国でスマホが使えないなんて、考えただけで恐ろしい。
幸い、水たまりではなかったんだけど、しばらく調子が悪くて、
「ねぇ、写真撮ってよ」と頼んでも、
シャッターを押すと画面が黒くなってしまうと言われて、
何回か試しても、だめ。
あの時のきまずさったら、ない。
撮り終った写真をシェアしようとなった時に、
皆が何でもないようにair dropを使ってシェアし始めたんだけど、
ナンダソレハ。
私はそんな機能が自分のケータイについてるなんて、その時、初めて知った。
いざ、私もやってみん。
……???
……できない。。
なんでか知らないが、ロックがかかっているらしく、できない。
私だけ、できない。
この時が一番、焦ったし、辛かった。
こんな思いしてまで、頑張ったのに、肝心の写真が手に入らないなんて。
そんなのってないだろう。
グーグルでロックの解除を検索しようにも、
あんぽんたんの私はポータブルWi-Fiを寮に忘れてきてしまって、それもできない。
外国の人は勿論、日本語が読めないし、日本人の二人も分からないと言う。
あれは、今度こそ本当に泣くかと思ったけど、何とか我慢した。
そっからは、
お土産屋さんに寄ったり、
紅茶屋さんに寄ったり、
和菓子屋さんで一瞬だけ注目されて、
何故かイタリアのお兄さんの撮影会が始まって、
途中でスターバックスに寄ってから、
最後に、ナショナルギャラリーのある広場に着いた。
後ろの方で、背伸びして顔をひょいと覗かせてるのが、私である。
うん。頑張った大賞を君にあげたい。お疲れ。
めでたく努力の結晶のような写真たちを手に入れまして、
こうして使えるものは使っていこう精神のもと、
ブログに惜しむことなく使っている次第であります。
ここら辺の記憶はおぼろで、
覚えているのは、
ボスさんが大き目のカップケーキを紅茶と一緒に頼んできて、
「うわぁ、さっきハンバーガーやらポテト、たらふく食べたのに
よく入るなあ……」
って思ってたら、案の定食べきれなくて、
「やまいぬちゃん、これ全部、後、食べていいよ」
と渡されてしまって、
内心ヒイヒイ言いながら食べた事ぐらいだね。
「食べていいよ」ってなんやねん。
小腹が空いてる時に食べたら、ちょうどよく美味しかっただろうカップケーキも
満腹な時に食べるのは苦行でしかなかった。勘弁してくれ。
イヤ、と言えない気弱な人間であります。
(ナショナルギャラリーってのは、モネの絵とかが観れる素敵なギャラリーで、
それはまた今度、改めて、ブログに書きたい。行ったからね。一人で)
解散、という事になり、私は学生寮に帰ることに。
さぁ!!!!!!!
ついに!!!
ついに!!!ここまでやってきました!!!
長かった!!!
ここまでですでに、しんどい思いを散々書き連ねてきたのですが、
言うならば、ここが第1章の山場ですよ!!!!
しゃらさん!! ここです!! 前言ってた、事件ってのは!!!
何なら、このくだりを書きたいがために、このブログを6週間の頭から書くなんて無謀
どうぞ、苦笑いしてやってください。
線!!!
解散、と言っても、正確に言えば、
「夕飯の時間」がある、ホームステイの子たちはここでお別れしましょう、
という事になり、私は学生寮だったけど、すでにへとへとだったから、
一緒に帰らせてもらうことになった。
途中まで、日本人の一個下の女の子と一緒に帰った。
どこかでちらりと書いたけど、
「留学先で出会ったお互い英語が苦手な日本人」
「格好悪いし、せっかくだから、あまり日本語は使いたくない」
というバリアのせいで、上手く距離感が掴めずにいた。
この子も英語はそんなに堪能ではないから、会話の輪にあまり入れず、
雨が降ったり止んだりした時に、私は傘を忘れたので(馬鹿でしょう)、
時々、中に入れてもらったんだけど、
英語で喋るのは、なんか恥ずかしいし、
日本語も嫌だし、で、隣にいるのにお互いほぼ黙っていた。
あまりに気まずいので、何回か話しかけたけど、
さっき書いたような理由のことを、やんわりと言われて、
すぐに会話をやめてしまう。
だから、お互いに傘の下から美しいロンドンの景色を眺めて、
カワイーとか、キレーとか、おずおずとビューティフルとか、一応つぶやいたりもした。
半日、そんな感じだったから、私はうっすらと、ボスさん程ではないにしろ、
この子に対しても苦手意識を抱いてしまっていた。
二人で異国の地下鉄で、
オイスターカードとやらの使い方やら、
最寄り駅までの行き方を
片言の英語で何度も駅員さんに聞いた。
あっちの駅員さんってのは、日本ほど「ご丁寧」ではなくて、
「あっち行ってこっち」
みたいに指さしてオシマイ、みたいな人が多い。
勿論、親切で愛想の良い人もいるけどね。
そうして、その年下ちゃん(ちなみに彼女は女子大出身だそうだ)と別れて、
いよいよ一人になった。
ちゃんと、最寄り駅、
Angelまでは着いたんだ。
「あれ……ここからどうやって帰るんだっけ……?」
時刻は夕暮れ。
まだ、この時点であんまり危機感はなかった。
むしろ余裕ぶっこいてた。
だって、私は昨晩、ハルカに教えてもらったのだ。
学生寮からangelまでの道を。
学生寮→angel
おっと。
そうだ、昨日はそのまま「隣駅の」チキンのお店に寄ったから、
Angel→学生寮
の道が分からない。
いや。
何とかなるだろ。
だって、来た道を戻れば良いだけなんだから。
大丈夫。大丈夫。
まだ夕方だし、のんびり帰ろう。
と、のんきなことを考えて、私はお散歩しながら帰ることにした。
学生寮はちょうど、angelと、もう一つ先の駅の、ちょうど中間にある。
Angelから徒歩15分くらい。
まあ、何とかなるだろ。
私は、もう遠い遠い昨晩の記憶を頼りに、けっこうゴキゲンに歩き始めた。
横断歩道を1回渡って、道沿いにずっと歩いた……はず。
道沿い……???
大通りの交差点がいくつもいくつもあるのだが。
確かスターバックスを通り過ぎた。
あれ、スターバックス二つあるな……??
夜と夕方じゃ、街の景色が全く違って見えるな……
……
……??
まぁ、いいや。
それっぽい道、てきとうに歩いてみるか。
大丈夫。ダイジョーブ。
いやぁ、馬鹿だよねぇ。
何、悠長なこと言ってんだ。
でも、この「見知らぬ土地で迷子になる」っていう歌詞に出てきそうなシチュエーションは私の心を大いに躍らせた。
鼻歌でも歌いだしそうなくらい。
だって、やっと私は自由を手にした。
ここには、オカンもオトンもいない。
言葉の通じない外国の新入生の皆さんも、
仲良くなれない日本人もいない。
自由だ。
めっちゃ楽しい。
見るもの全てが新鮮で美しい。
沈んでいた気持ちが、華やいでくる。
ああ。やっと、息ができる。
そんな気持ち。
私はこの時、沢山、写真を撮った。
迷子になりながら、当の本人は、のんきに楽しく写真を撮った。
目に映る全てを写真に収めたかった。
どんどん日が暮れてあたりが暗くなっていくのも構わずに。
ホームレスのおじさんに寄り添う犬と、
地下鉄からは路上パフォーマンスの演奏が小さく聞こえる。
私はあの時、冒険のただ中にいた。
あなたのする事を愛せ。
まさに今の私にぴったりの言葉だと思った。
日本と違って、こんな素敵な言葉が何気なく日常にあるなんて、
なんて素敵なんだろう。
私はうっとりと通り過ぎた。
どんどん歩いて行くと、小さな中庭があった。
見ると、門は開いている。
私は迷わず、中に入った。
中は小さな森のようで、小道が続いている。
小さなベンチが並んでて、仲の良さそうなカップルが一組座って話している。
中庭は柵で囲まれていて、
柵越しに見たお家が明かりに照らされて素敵だった。
この間までのサムネのイラストは、
この中庭の横の通りの写真を真似して書いた。
やっぱり鍵は開いていたから、下って行った。
夜の濃紺と明かりの黄色。
ドキドキしながら進んでいった。
すぐに検索してナビで帰れるのに。
駅員さんにその住所を見せた。
住所を地図のアプリで検索してくれた。
ぶるぶるぶるぶる、もはや痙攣しながら、
私は2時間歩きまくって、さらに1時間男子寮を彷徨い、最後は身を潜めていた。