やまいぬは書かねばと思った

へたれ女子大生やまいぬは今日も走る

ロンドンで王子様に会いました#4

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前回までのあらすじ

 

→新入生の皆さんとハンバーガー食べた

 

 

 

今回は、いつもより少しだけ写真多めの!!予定!!だよ!!!

 

 

 


 

 

 

何はともあれ、ハンバーガーを食べ終って、皆でぞろぞろ外に出た。

 

 

私たちがこれから通うことになる語学学校は、ロンドンのど真ん中にあって、

 

 

徒歩で国会議事堂とかロンドンアイとか行けるようなとこだった。

 

 

てなわけで、さっそく皆で行ってみましょうってことになり。

 

 

と言っても、私は正直、ここら辺の記憶が曖昧だ。

 

 

自分がくっついて歩いてる皆さんの名前もいまいちわからない、

 

 

自分がこれからどこに向かって歩くんだか、何を見に行くんだかも、

 

 

その時は、よく分かっちゃいなかった。

 

 

しばらく経ってから、

 

 

「あ、あの時観たあれが国会議事堂か」

 

 

「あれがナショナルギャラリーだったのか」

 

 

とか、ガイドブックやら見て理解した。

 

 

いまいち感慨に欠けるから、改めて自分でもう一回行ったりしたし、

 

 

そもそも近所だから、後日、他の人たちと、

 

 

今度はちゃんと仲良くなった友達と行く機会があって

 

 

良かったなあ、って話がここで書けるのは、まだまだ先なんだけどね。

 

 

 


 

 

 

何はともあれ書いていきましょう。

 

 

 

最初に向かったのはロンドンアイ。

 

 

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ロンドンで一番有名な大きい観覧車だ。

 

 

卵みたいな形のカプセルがゆっくり回っている。

 

 

 

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あー、そういや、1回も乗らないで帰ってきたなあ。

 

 

そうだ、この日はどんより曇天で、雨が降ったり止んだりしてた。

 

 

まさに私の心模様そのままだ。

 

 

私たちはロンドンアイに続く川沿いの道をずっと歩いてたんだけど、

 

 

目の前にはけっこういい景色が広がっていて、

 

 

川の向こうには、私だって聞いたことがあるビッグベンだって見えるのに、

 

 

どうしてだろう、私はやっぱり一人ぼっちで歩いていた。

 

 

皆の輪の中に入れなくて、

 

 

でも、景色の写真ばかりも悲しいから、

 

 

無理やりはしゃいで、

 

 

「ねぇ、撮ってくれる?」だなんてさ。

 

 

 

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ここら辺は、ただただ所在なく、ぽつんと歩いてた気がする。ひたすら。

 

 

聞こえないし、聞いてもらえなかった。

 

 

一緒にいるのに、一緒にいない。

 

 

私の隣に、誰も並んで歩かない。

 

 

うーん。悲しかったなぁ。

 

 

その後は橋を渡って、ビッグベンの近くまで行って、また写真を撮った。

 

 

川の反対側から向こうのロンドンアイが見える。

 

 

台湾の美人さんが、何やらケータイを見てはしゃいでいる。

 

 

ちらりとのぞくと、

 

 

女の子二人がカメラに背を向けて、

 

 

ロンドンアイに二人で作ったハートをかざしている。

 

 

多分、カップルの定番ポーズか何かなんだろうな。

 

 

台湾の美人さんと韓国のお洒落さんが二人でそれをやろうとするのを私は何回か手伝った。

 

 

勿論、私は撮影係だったけど。

 

 

でも、その後、私があんまりしょぼんとした顔をしてたのか、

 

 

「一緒に写ろうよ」と言われて、

 

 

二人とそれぞれ2ショットを撮った。

 

 

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撮った写真を見たら、ちょうど強い風が吹いてしまって、

 

 

私の髪の毛はライオンみたいになっていた。

 

 

あらら。

 

 

私が一人で歩いてたのは、

 

 

まず、私が引っ込み思案で上手く馴染めなかったのが大きいけど、

 

 

もう一つは、皆の歩くスピードが、てんでばらばらだったからだ。

 

 

仲良しの台湾美人さんと韓国お洒落さんは、二人で足取りも軽く

 

 

すたすた歩くけど、

 

 

フランスとスペインの背の高い二人の美人さんが、めちゃめちゃマイペースだった。

 

 

気づくと、遥か後ろで撮影会をしている。

 

 

皆がどんなに先を歩いて、見えなくなりそうになろうがお構いなしだ。

 

 

スペインの美人さんがモデルさんみたいにポーズとったら、

 

 

後ろで子ども連れのパパさんがこっそり真似してたのを、たぶん、気づいたのは私だけ。

 

 

橋を全員、渡り終えた時、皆で電話ボックスの前で写真を撮った。

 

 

 

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皮肉なことに、この写真がけっこう素敵に撮れている。

 

 

「留学で友達沢山できました!」みたいなね。

 

 

ちょうどSNSにあげると、いかにも映えそうな、そんな写真。

 

 

一見すると、本当に、とっても素敵な写真なんだけど、

 

 

写っている私の顔が、何とも言えない。

 

 

分かるよ。当時の私よ。

 

 

けっして社交的ではない私にしては、あの時、けっこう頑張ってたと思うよ。

 

 

出来上がった写真の私は、少しでも恰好よく写ろうと思って、コートの前をわざわざ開けて写ったんだけど、

 

 

何かちぐはぐな感じになってしまって、おまけに深い赤と中に着ていた深緑の相性が最悪だった。

 

 

うう。悲しい。

 

 

この写真にショックを受けた私は、もともとあんまり好きじゃなかったこのコートを、

 

 

ますます嫌いになってしまって、それ以後、あんまり着なかった。

 

 

ごめんね、お母さん。

 

 

だって、皆、お洒落で、美人で、気まずかったんだ。

 

 

防寒ばっちりのでっかいコートが。

 

 

おまけにこの時、私はスマホを、雨に濡れた道路に落っことしてしまうという失態を犯した。

 

 

外国でスマホが使えないなんて、考えただけで恐ろしい。

 

 

幸い、水たまりではなかったんだけど、しばらく調子が悪くて、

 

 

「ねぇ、写真撮ってよ」と頼んでも、

 

 

シャッターを押すと画面が黒くなってしまうと言われて、

 

 

何回か試しても、だめ。

 

 

あの時のきまずさったら、ない。

 

 

撮り終った写真をシェアしようとなった時に、

 

 

皆が何でもないようにair dropを使ってシェアし始めたんだけど、

 

 

Air drop?

 

 

ナンダソレハ。

 

 

私はそんな機能が自分のケータイについてるなんて、その時、初めて知った。

 

 

いざ、私もやってみん。

 

 

……???

 

 

……できない。。

 

 

なんでか知らないが、ロックがかかっているらしく、できない。

 

 

私だけ、できない。

 

 

この時が一番、焦ったし、辛かった。

 

 

こんな思いしてまで、頑張ったのに、肝心の写真が手に入らないなんて。

 

 

そんなのってないだろう。

 

 

グーグルでロックの解除を検索しようにも、

 

 

あんぽんたんの私はポータブルWi-Fiを寮に忘れてきてしまって、それもできない。

 

 

外国の人は勿論、日本語が読めないし、日本人の二人も分からないと言う。

 

 

あれは、今度こそ本当に泣くかと思ったけど、何とか我慢した。

 

 

 


 

 

そっからは、

 

 

 

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お土産屋さんに寄ったり、

 

 

 

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紅茶屋さんに寄ったり、

 

 

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和菓子屋さんで一瞬だけ注目されて、

 

 

 

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何故かイタリアのお兄さんの撮影会が始まって、

 

 

 

途中でスターバックスに寄ってから、

 

 

最後に、ナショナルギャラリーのある広場に着いた。

 

 

 

 

 

 

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後ろの方で、背伸びして顔をひょいと覗かせてるのが、私である。 

 

 

うん。頑張った大賞を君にあげたい。お疲れ。

 
 
ちなみに、途中で寄ったスタバの店内無料Wi-Fi使って、
 

ググって、air dropを無事、解除する事ができまして、
 

めでたく努力の結晶のような写真たちを手に入れまして、
 

こうして使えるものは使っていこう精神のもと、
 

ブログに惜しむことなく使っている次第であります。
 

ここら辺の記憶はおぼろで、
 

覚えているのは、
 
 
ボスさんが大き目のカップケーキを紅茶と一緒に頼んできて、
 

「うわぁ、さっきハンバーガーやらポテト、たらふく食べたのに
 

よく入るなあ……」
 

って思ってたら、案の定食べきれなくて、
 

やまいぬちゃん、これ全部、後、食べていいよ」
 

と渡されてしまって、
 

内心ヒイヒイ言いながら食べた事ぐらいだね。
 
 

「食べていいよ」ってなんやねん。
 

小腹が空いてる時に食べたら、ちょうどよく美味しかっただろうカップケーキも
 
 

満腹な時に食べるのは苦行でしかなかった。勘弁してくれ。
 
 

イヤ、と言えない気弱な人間であります。
 
 

 
 
さて、ナショナルギャラリー前に着いてから、
 

(ナショナルギャラリーってのは、モネの絵とかが観れる素敵なギャラリーで、
 

それはまた今度、改めて、ブログに書きたい。行ったからね。一人で)
 

解散、という事になり、私は学生寮に帰ることに。
 

さぁ!!!!!!!
 

ついに!!!
 

ついに!!!ここまでやってきました!!!
 

長かった!!!
 

ここまでですでに、しんどい思いを散々書き連ねてきたのですが、
 

言うならば、ここが第1章の山場ですよ!!!!
 

しゃらさん!! ここです!! 前言ってた、事件ってのは!!!
 

何なら、このくだりを書きたいがために、このブログを6週間の頭から書くなんて無謀
な事を始めたようなものです。
 

どうぞ、苦笑いしてやってください。
 

線!!!
 

解散、と言っても、正確に言えば、
 

「夕飯の時間」がある、ホームステイの子たちはここでお別れしましょう、
 

という事になり、私は学生寮だったけど、すでにへとへとだったから、
 

一緒に帰らせてもらうことになった。
 

途中まで、日本人の一個下の女の子と一緒に帰った。
 

どこかでちらりと書いたけど、
 

「留学先で出会ったお互い英語が苦手な日本人」
 

「格好悪いし、せっかくだから、あまり日本語は使いたくない」
 

というバリアのせいで、上手く距離感が掴めずにいた。
 

この子も英語はそんなに堪能ではないから、会話の輪にあまり入れず、
 

雨が降ったり止んだりした時に、私は傘を忘れたので(馬鹿でしょう)、
 

時々、中に入れてもらったんだけど、
 

英語で喋るのは、なんか恥ずかしいし、
 

日本語も嫌だし、で、隣にいるのにお互いほぼ黙っていた。
 

あまりに気まずいので、何回か話しかけたけど、
 

さっき書いたような理由のことを、やんわりと言われて、
 

すぐに会話をやめてしまう。
 

だから、お互いに傘の下から美しいロンドンの景色を眺めて、
 

カワイーとか、キレーとか、おずおずとビューティフルとか、一応つぶやいたりもした。
 

半日、そんな感じだったから、私はうっすらと、ボスさん程ではないにしろ、
 

この子に対しても苦手意識を抱いてしまっていた。
 

二人で異国の地下鉄で、
 

オイスターカードとやらの使い方やら、
 

最寄り駅までの行き方を
 

片言の英語で何度も駅員さんに聞いた。
 

あっちの駅員さんってのは、日本ほど「ご丁寧」ではなくて、
 

「あっち行ってこっち」
 

みたいに指さしてオシマイ、みたいな人が多い。
 

勿論、親切で愛想の良い人もいるけどね。
 

そうして、その年下ちゃん(ちなみに彼女は女子大出身だそうだ)と別れて、
 

いよいよ一人になった。
 

ちゃんと、最寄り駅、
 

Angelまでは着いたんだ。
 
 

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問題はここからだった。
 

「あれ……ここからどうやって帰るんだっけ……?」
 

時刻は夕暮れ。
 

まだ、この時点であんまり危機感はなかった。
 

むしろ余裕ぶっこいてた。
 

だって、私は昨晩、ハルカに教えてもらったのだ。
 

学生寮からangelまでの道を。
 

学生寮→angel
 

おっと。
 

そうだ、昨日はそのまま「隣駅の」チキンのお店に寄ったから、
 

Angel→学生寮
 

の道が分からない。
 

いや。
 

何とかなるだろ。
 

だって、来た道を戻れば良いだけなんだから。
 

大丈夫。大丈夫。
 

まだ夕方だし、のんびり帰ろう。
 

と、のんきなことを考えて、私はお散歩しながら帰ることにした。
 

学生寮はちょうど、angelと、もう一つ先の駅の、ちょうど中間にある。
 

Angelから徒歩15分くらい。
 

まあ、何とかなるだろ。
 

私は、もう遠い遠い昨晩の記憶を頼りに、けっこうゴキゲンに歩き始めた。
 

横断歩道を1回渡って、道沿いにずっと歩いた……はず。
 

道沿い……???
 

大通りの交差点がいくつもいくつもあるのだが。
 

確かスターバックスを通り過ぎた。
 

あれ、スターバックス二つあるな……??
 

夜と夕方じゃ、街の景色が全く違って見えるな……
 

……
 

……??
 

まぁ、いいや。
 

それっぽい道、てきとうに歩いてみるか。
 

大丈夫。ダイジョーブ。
 

いやぁ、馬鹿だよねぇ。
 

何、悠長なこと言ってんだ。
 

でも、この「見知らぬ土地で迷子になる」っていう歌詞に出てきそうなシチュエーションは私の心を大いに躍らせた。
 

鼻歌でも歌いだしそうなくらい。
 

だって、やっと私は自由を手にした。
 

ここには、オカンもオトンもいない。
 

言葉の通じない外国の新入生の皆さんも、
 
 

仲良くなれない日本人もいない。
 

自由だ。
 
 

めっちゃ楽しい。
 
 

見るもの全てが新鮮で美しい。
 
 

沈んでいた気持ちが、華やいでくる。
 
 

ああ。やっと、息ができる。
 

そんな気持ち。
 

私はこの時、沢山、写真を撮った。
 

迷子になりながら、当の本人は、のんきに楽しく写真を撮った。
 

目に映る全てを写真に収めたかった。
 

どんどん日が暮れてあたりが暗くなっていくのも構わずに。
 
 

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天使という名の駅前の、小さな花屋が愛おしい。
 

ホームレスのおじさんに寄り添う犬と、
その隣にしゃがんで楽しそうに話しかけるお姉さんの横顔。
 

地下鉄からは路上パフォーマンスの演奏が小さく聞こえる。
 

私はあの時、冒険のただ中にいた。
 
 

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LOVE WHAT YOU DO
 

あなたのする事を愛せ。
 

まさに今の私にぴったりの言葉だと思った。
 

日本と違って、こんな素敵な言葉が何気なく日常にあるなんて、
 

なんて素敵なんだろう。
 

私はうっとりと通り過ぎた。
 

どんどん歩いて行くと、小さな中庭があった。
 

見ると、門は開いている。
 

私は迷わず、中に入った。
 

中は小さな森のようで、小道が続いている。
 

小さなベンチが並んでて、仲の良さそうなカップルが一組座って話している。
 

中庭は柵で囲まれていて、
 

柵越しに見たお家が明かりに照らされて素敵だった。
 
 

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この間までのサムネのイラストは、
 

この中庭の横の通りの写真を真似して書いた。
 

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暗い小さな森の道を進んでいくと、今度は川に続く階段が見えた。
 

やっぱり鍵は開いていたから、下って行った。
 
 
 
川面に光が浮いている。
 

夜の濃紺と明かりの黄色。
 

ドキドキしながら進んでいった。
 
 

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どうしてだろう。怖くない。
 
 
美しい美しい、誰も私を知らない国で、夜の色に染まって、
 
 
どこまでもどこまでも、私は一人で歩いて行ける、
 
 
そんな気がした。まるで熱に浮かされて。
 
 
でも、そうはいかないんだ。
 
 
私は橋をくぐって、小船の横を通り過ぎると、
 
 
もうそこは行き止まりだった。
 
 
戻らなきゃ。
 
 
どこに?
 
 
……私はどこに戻れば良いんだろう?
 
 
あれ……?
 
 
ここまでですでに1時間が経過していた。もうすっかり暗い。
 
 
私はひとまず、もと来た道を足早に引き返して、
 
 
駅に戻った。
 
 
もう川も花屋も光も闇も、優しくなかった。
 
 
急に、それは怖いものになった。
 
 
私は昨日の記憶を頼りに、今度はさっきと違う道を選んでみた。
 
 
それでも学生寮はちっとも見つからない。
 
 
「あのね、スーパーマーケットが見えたら、学生寮はすぐそこって覚えてね。通り過ぎ
ないように、それを目印に曲がってね」
 
 
その小さなスーパーマーケットがいつまでたっても見えてこない。
 
 
おかしいな。
 
 
私は何べんも何べんも、駅と交差点から伸びる大通りを行き来した。
 
 
歩いてみて、
 
 
「たぶん、この道は間違っている気がする」
 
 
と思ったら、また引き戻すの繰り返し。
 
 
駅のすぐそこのスターバックスの女神が意地悪にこちらを見ている。
 
 
途中で疲れて、パン屋さんでサンドイッチとヨーグルトとジュースを買った。
 
 
晩御飯として。
 
 
ちゃんと部屋に戻って、安心して食べようと。
 
 
私は晩御飯の入った紙袋を片手にまた歩いた。
 
 
歩いて歩いて歩いた。
 
 
スタッフの人にもらった地図を、なんで置いてきてしまったんだろう。
 
 
どうしてあの時、私は大丈夫だと思ってしまったんだろう。
 
 
何でたった一度教えてもらっただけで。
 
 
ああ、ちゃんとポータブルWi-Fiを鞄に移しておけば、
すぐに検索してナビで帰れるのに。
 
 
見ると、携帯の充電は5%になっていた。
 
 
充電器なんて持ってきてない。
 
 
どうしよう。
 
 
歩いていたお兄さんに、
 
 
「すみません、この名前の学生寮、場所知りませんか」
 
 
半泣きで聞いても、勿論、分かるはずがない。
 
 
どうしよう。どうしよう。
 
 
何でこんな日に限って、ヒールをはいているんだろう。
 
 
それは、少しでもお洒落に、初めての友達に思ってほしかったから。
 
 
もう足の裏の感覚がない。
 
 
ロンドンの天候は変わりやすい。
 
 
なんと、雨まで降ってきてしまった。
 
 
傘までもっていないなんて、私はどこまで馬鹿なんだ。
 
 
携帯の充電が、また減ってしまった。
 
 
使えなくなるのも時間の問題だ。
 
 
びしょびしょになりながら、駅の案内板の地図を見ていると、
 
 
 
タバコくさいおじさんがニヤニヤと話しかけてきた。
 
 
返事もせずに逃げ出す。
 
 
ガサガサッ
 
 
ずぶ濡れだったせいで、紙袋の底が抜けてしまった。
 
 
それはちょうど、私がさっきくぐった橋の上。
 
 
サンドイッチはぶちまけられて、ジュースは転がり、
 
 
ヨーグルトは蓋が空いて、私の靴にべっとりとついた。
 
 
よりによって、刺繍が施してあるところに。
 
 
涙は出なかった。
 
 
どうしようもなくて、ただ空を仰いだだけだった。
 
 
その仰いだ顔にまた雨は降り、
 
 
最悪だ。なんなんだ、これは。
 
 
もう、なんなんだよ。
 
 
私、ここで死ぬんじゃないだろうか。
 
 
大声で泣けるもんなら、今すぐにでも泣き出したいのに、
 
 
私はジュースだけ拾って、また歩く。
 
 
ふと、お母さんの声を思い出した。
 
 
「いい? 面倒くさがらずに、学生寮の住所はちゃんと控えておきなさいよ」
 
 
私はなけなしの充電を使って、「メモ帳」を開いて、渋々書いておいた
学生寮の住所を、ボールペンで、ガイドブックの裏表紙に書き写した。
 
 
もう、充電は2%
 
 
私はあのおじさんがいないのを確認して駅に戻って、
駅員さんにその住所を見せた。
 
 
駅員のおじいさんは、案内板の地図を使って、丁寧に道を教えてくれた。
 
 
私が覚えられないので、道順を書いてもらっていいですかと聞くと、
 
 
奥から、紙の地図を持ってきて、
 
 
私のボールペンを使って、ルートを書いてくれた。
 
 
「いいかい。この通りに、まず目の前の大通りをまっすぐ歩くんだよ。
 
 
そうすると今度はこの通りにぶつかるから、そこを曲がって、
 
 
丸つけとくからね、いいかい、ここを曲がるんだよ、
 
 
そしたら最後にこの細い道を曲がると着くよ」
 
 
私は何度もお礼を言って、歩き出した。
 
 
地図は雨に濡れて、すぐにぐしゃぐしゃになって、ボールペンは滲んだけど、
 
 
とにかく歩いた。必死だった。
 
 
途中で心配になって、コンビニに寄って、
 
 
「この住所に行きたくて、この地図をもらったんですが、この道、私あってますか?」
 
 
レジのお兄さんはしばらく、ぐしゃぐしゃの地図を見て、住所の走り書きを見て、
おもむろに自分のスマホを取り出すと、
住所を地図のアプリで検索してくれた。
 
 
「大丈夫あってるよ。もうすぐだから頑張りな」
 
 
そのコンビニでもう一度、サンドイッチとヨーグルトを買って、
お礼を言って、歩いた。
 
 
あ。
 
 
スーパーマーケット。
 
 
あった……
 
 
それは改めてみると、本当に小さくて、気づかずに通り過ぎてしまいそうだった。
 
 
やっと着いた……!!!!!
 
 
もう迷子になって2時間が経っていた。
 
 
まっすぐたどり着けば20分の道を。
 
 
私はもう狂喜乱舞の勢いで、学生寮の扉に駆け寄った。
 
 
鍵をインターホンにかざすと、扉はついに開く、
 
 
……はずだった。
 
 
あれ????
 
 
おい、勘弁してくれ。
 
 
おい!!!!!!!!!!
 
 
それは地獄の迷子劇、最終章の幕開けだった。
 
 
皆さん、この長いブログにあと少しだけお付き合いください。
 
 
私だって、本当に早く帰りたかった。
 
 
なのに。
 
 
 
学生寮の扉が、開かない。
 
 
意味分からん。
 
 
そんなことあってたまるか。
 
 
もう気が狂うんじゃないかと思ってたら、たまたま他の学生がやって来て、
 
 
 
私を怪訝そうに見ながら、
 
 
ピッ
 
 
いとも簡単に鍵を開けた。
 
 
???????
 
 
 
私はもう何が何だか分からなかったけど、その男子学生の後に滑り込んだ。
 
 
私と彼はそのままエレベーターに乗った。
 
 
えっと……
 
 
私は4階を押した。
 
 
ピンポーン
 
 
さぁ、やっと帰れる。やったああああ!!!!!
 
 
 
11号室 12号室
 
 
あれ????
 
 
私の部屋は、確か24号室だったような。
 
 
あれ???????
 
 
あの時、ハルカに笑われながら、
 
 
4階24号室ね。オッケーオッケーと確認したはずなのに。
 
 
ない。
 
 
4階に24号室がない。
 
 
もうここまで散々、迷子になっていたから自分の記憶はちっとも信用できなかった。
 
 
もしかして、6階の間違いだろうか。
 
 
私は6階に行った。
 
 
ゲ。
 
 
さっきエレベーターで乗り合わせた男子と、また会ってしまった。
 
 
ものすごい、不審そうに見られている……気がする。
 
 
しかも6階にも24号室はない。
 
 
私は慌ててエレベーターに引っ込んで、8階に行ってみた。
 
 
ここも違う。
 
 
偶数階でさえ、記憶違いなのか????
 
 
他の階に行くも、違う。
 
 
もしかして、「4階」があってて、24号室が記憶違い??????
 
 
私は4階の12号室に戻って、そおっと扉を押してみた。
 
 
鍵はかかっていなかったようで、扉はすんなりあいた。
 
 
!?!?!?!?!?!
 
 
ハイ!?!?
 
 
扉を開けると、目の前に
 
 
パンイチ半裸のゴツいお兄さんがニンジンを切っていた。
 
 
もう出来うる一番の速さで扉を閉めた。
 
 
驚き過ぎて、声も出せない。
 
 
 
人間、本当にパニックになると、声が出せないらしい。
 
 
私はもう砂漠の遭難者みたいな気持ちで、上から下まで学生寮を彷徨う羽目になった。
 
 
エレベーターを何度も使うと乗り合わせた人に怪訝な顔をされるのが耐えられなくて、泣き泣き階段を使った。
 
 
分からない。もう本当に、何が何だか分からない。
 
 
もう半裸ニンジンのお兄さんがトラウマで、扉を開くのも嫌だ。
 
 
私はグランドフロアに戻って、人目につかない隅の方にひっこんで、しゃがみこんだ。
 
 
 
本当に本当に、格好悪くて情けなくて、死にたくなる程、惨めな気持ちだったけど、
 
 
ひん死のスマホをとりだして、急いでメッセージを送った。
 
 
 
その宛先は、まだ知り合って1日しか経ってないハルカ。
 
 
 
お洒落で、留学を楽しんでいて、高学歴で、良い人。
 
 
 
私は劣等感に震えながら、テキストを打ったのだった。
 
 
 
「かくかくしかじか、もう本当に困ってしまって、どうしようもないので、
 
 
 
すごく申し訳ないのだけれど、どうかグランドフロアまで迎えに来てもらえませんか」
 
 
 
もう自分の、何もかも、信じられなかった。
 
 
 
世界一の大馬鹿やろうのアンポンタン。
 
 
 
ついに充電は切れてしまった。
 
 
 
私はもう惨めだし、寒いしで、文字通り、ぶるぶる震えながら、
ハルカが来るのを待っていた。
 
 
 
ずっと、待っていた。
 
 
 
……ハルカは、来なかった。
 
 
 
カップルがふざけあう声も、男の子同士が酔っ払って騒いでるのも、
 
 
 
聞きながら、ずっと隠れていた。
 
 
 
後で聞いたら、ハルカはこの日、遠くに買い物に行っていて、
部屋に帰ってきたのは深夜だった。
 
 
 
突然、雷みたいな閃きが、私を全身を走った。
 
 
 
もしや。
 
 
 
もしかしてもしかして。
 
 
 
私は学生寮を飛び出した。
 
 
 
そして、走って行った先に
 
 
 
「第二学生寮」があった。
 
 
 

ぶるぶるぶるぶる、もはや痙攣しながら、
 
 
 
鍵をかざした。
 
 
 
ピッ……
 
 
あ、あいたーーーーーーーーー!!!!!!!!!
 
 
 
実は私がさっきまでいたのは「第一学生寮」で、
 
 
「男子寮」だった。
 
 
どうりで。
 
 
どうりで、すれ違う人みんな不審そうに見てくると思った。
 
 
 
そりゃあ、マッチョのお兄さんも半裸でニンジンを切るわけだわ。
 

私は2時間歩きまくって、さらに1時間男子寮を彷徨い、最後は身を潜めていた。
 
 
今世紀最大の馬鹿なんじゃないのか。我ながら。
 
 
なんて可哀そうな人間なんだ。
 
 
ちゃんと4階には24号室があって、
 
 
何も知らないルームメイトが
 
 
 
“Hi! How are you?”とか呑気に声をかけてきて、
 
 
 
憎しみを込めてアイムファインと返しておいた。
 
 
 
ちなみにこんな思いをして買ってきたサンドイッチは馬の糞みたいな味がした。
 
 
 
ヨーグルトは、何故かプロテインがたっぷり入っていた。
 
 
 
私は。
 
 
私は、
 
 
その夜、ベッドで少しだけ泣いたかどうか、
 
 
もう忘れてしまいました。
 
 
 
 
 
 
今日はロンドン二日目、後半戦のお話でした。
 
 
 
続きは、また今度。
 
 
 
やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ
 
 
 

 
 
なんだお前 男なら
王子なんか 気取るなよ
優しい顔も言葉もいらない
乱暴に強引に キスしてくれよ