やまいぬは書かねばと思った

ロンドンで王子様に会いました#3

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前回までのあらすじ

 

→新入生、集合!!!!!

 

 


 

 

 月曜は基本、授業が無い。

 

 

ここにいるのは、皆お揃いの「新人」ばかりだ。

 

 

カフェテリアから、何組かに分けられて、ぞろぞろと教室に移動する。

 

 

着いた教室には10人くらいいただろうか。

 

 

一応、私はルームメイトの子の隣に座った。一応。

 

 

皆がぞろぞろ着席していると、何やら元気な先生がやってきた。

 

 

「ハァーーーーィ!!皆さんごきげんようーーーーー!!!!」

 

 

金髪でクネクネショートの、チアガールを思わせる先生。

 

 

先生の服は蛍光ピンクのTシャツだったか、派手な花柄だったか。

 

 

うう。苦手だ……

 

 

私は先生の「陽」のエネルギーでさっそく吹き飛ばされそうになった。

 

 

先生、そのまま、テーブルに置いてあった「おもてなし」をめちゃめちゃ勧めてきた。

 

 

手作りクッキー3種(勿論、特大)、何かのパウンドケーキ、バナナ、リンゴ、他にもあった気がするけど、忘れた。

 

 

ディズニーだったら、お盆の上のリンゴに手足が生えて踊りだしそうだ。

 

 

「さあ、召し上がれ!!!」

 

 

と、んな、いきなり言われても、誰も食べようとしない。

 

 

「アラ、皆、遠慮しないでーーーーーー!!!」

 

 

って言いながら、先生は自分でクッキーを食べ始める。

 

 

これが外国の洗礼ってやつか……

 

 

日本人には厳しいぜ、と思ったけど、他の国の人たちもおのおの苦笑いしてた。

 

 

だよねぇ。

 

 

全員、着席して、先生も一旦、「おもてなし」を休止したところで、

今度は気の遠くなるほど長い「お話」が始まった。

 

 

語学学校の先生たちの紹介やら、カリキュラム、緊急時の対応とか。

 

 

いや、まぁ、大事なんだろうけど。

 

 

長い。

 

 

長いよ、ティーチャー。

 

 

サービス盛り盛りのパワーポイントは終わりが見えない。

 

 

あと先生が気を利かせて、それはそれはオーバーな英語で話してくれるのだけど、

 

 

それはそれで、聞いてて疲れる。

 

 

何でか知らないけど、先生はしょっちゅう

 

 

「ウキ!」「ウキ!」と口癖のように言うので、

 

 

意識朦朧としながら(だってロンドン到着の翌朝8:30集合だ)、

 

 

「先生はサルなんだなぁ……」

 

 

とか考えてた。

 

 

まあまあ、限界である。

 

 

後日、めでたくできた友人と話して分かったことは、

 

 

先生はサルの真似をしてたんじゃなくて、

 

 

「OK!?」「OK!?」

 

 

と言ってたらしい。どうかしてるのは私の耳だった。

 

 

(でも友達も「あのウキ!の先生覚えてる?」って話し出したから、

特徴的だったのは確かだ)

 

 

私は目を開けてることに全力を注いでたから、

 

 

残念ながら、先生の話はスピードラーニングみたいに聞き流してた。

 

 

「アラ、皆、眠っちゃいそうねーー!!」とか言ってるのは聞こえたけど。

 

 

先生が何か4桁の数字を言って、皆、覚えてねーーとか言ってるのも、

 

 

「緊急時には私は皆の後についていこう」とかぬるい事考えてメモさえしなかった。

 

 

実は、この数字が、けっこう大切だったてのが後々、分かるのだけど。

 

 

先生の長い長い「はじめのお話」が終わってからは、

 

 

今度は一人づつ、学生証のチェックと、

 

 

ペアでプレイスメントテストを受けることになった。

 

 

先生と(これはウキの先生じゃない他の先生だった)2対1で軽い会話をして、

 

 

明日からのクラスが振り分けられるそうな。

 

 

順番が回ってくるまで、結構、暇である。

 

 

またウキ先生がクッキーやらリンゴをごり押しし始めて、ようやく皆、手を伸ばすようになった。

 

 

あ、そうだ。ペットボトルの水とかも配ってたな、ウキ先生。先着よ!とか言って。

 

 

ちなみにチョコクッキーは、めちゃめちゃ、めちゃ甘かった。

 

 

あま~い、とかじゃなくて、「あ、甘い…ッッ!!」ってなるやつ。

 

 

なかなかヘビーな甘々クッキーだった。あぶねぇ。

 

 

にしても、だ。

 

 

この待ち時間が、だいぶキツかった。

 

 

先生はゴキゲンにユーチューブからBGMとかかけてくれたけど、

 

 

そうもいかない。

 

 

頼みの綱の私の隣のルームメイトは、その隣の誰かさんと

ハイレベルな英会話で盛り上がっている。

 

 

反対側の私の隣の子はiPhoneに釘付けだ。

 

 

どっちにも頑張って話かけたけど、あっという間に会話が終わってしまう。

 

 

会話のキャッチボールというより、へなちょこの豆鉄砲を一人でしょぼしょぼ打っている気になる。

 

 

ちなみに隣のスマホガールにはネタが無さ過ぎて、

 

 

「見てみて、このアプリで録音すると店内BGM検索してくれるんだよ」

 

 

って、先生の流すBGMで試しにやってみせたら

 

 

(私はこれ最近、教えてもらってマイブームだった)

 

 

あー、それね。私も同じようなやつ持ってるよ、と一蹴されてしまった。

 

 

この悲しいBGM検索アプリ、なかなか実は6週間、活躍してくれた。

 

 

ロンドンのあちこちで拾った曲の一つ一つに思い出が詰まっていて、

 

 

今聞いても、胸がぎゅっとなってしまう。

 

 

こうして、私は両隣りの女の子との会話に失敗したわけで、

 

 

もう大人しくしてれば良かったんだけど、

 

 

それがさ。

 

 

聞いてよ。

 

 

後ろに日本人のイヤな女が座ってたのさ。

 

 

私が勝手に敵対視してただけだけど。

 

 

その人が、まぁブイブイトークを回してるわけだ。

 

 

私の真後ろで。

 

 

華麗に「ジャパントーク」を繰り広げている。

 

 

生き生きバリバリ、スピーキングしてるわけ。

 

 

小粋なジョークと突っ込みなんかも、知的に素敵に、兼ね合わせちゃってるわけ。

 

 

やめろおおおおおおお。

 

 

私の後ろでやめろおおおおおおお。

 

 

なんか焦るから、やめてくれええええええええ。

 

 

意を決して、

 

 

「あ、私も東京出身だよ!」

 

 

って振り向いたら、

 

 

「あ、ウン、私も大学、東京」

 

 

って一言、冷ややかに言われてオシマイ。

 

 

私はそそくさ、前に向きなおした。

 

 

あああああ。居心地が悪いよううううううう。

 

 

テストの順番はまだまだ回ってきそうにない。

 

 

私はここで暴挙に出た。

 

 

「ちょっとごめんね」

 

 

隣の子たちに謝りながら、はい出ると、

 

 

私はわざわざ、一列前、私のはす向かいの子のとこまで出向いた。

 

 

もうこの時点で私の色んな数字が削れまくってた。

 

 

もうどうにでもなれ!!!!!えいやー!!!!

 

 

「あの…!!! 私とお話してください!!!」

 

 

ドーン

 

 

「あ、あ、あ、あなたとお話したいです!!!!!」

 

 

ドドーン

 

 

私がコレ、イケメンにされたら、その一途さに胸打たれて結婚する。

 

 

ああ、悲しいかな、私は人選を誤ったらしい。

 

 

そもそも何でその子に話しかけることにしたかというと、

 

 

他の子たちがぎこちなくも談笑してるなか、

 

 

その子は一人ポケーっとして、かと思うと、立ち上がって、クッキーをもさもさ食べている。

 

 

追い詰められたその時の私は思ったのだ。

 

 

「きっと、あの子も人見知りに違いない!!!!

 

 

さっきからクッキー、地味に食べまくってるけど、あれは手持無沙汰で仕方なく食べているんだろう!!!

 

 

これは話しかけたら、お友達になれちゃうんじゃないの!!!!???」

 

 

この時の私はまさに「休み時間、一人で寂しそうにしてる転校生に話しかける委員長」だった。

 

 

(自分がボッチなのは棚上げ)

 

 

ところが、だ。

 

 

いざ、話しかけてみたら、オヤ、思ってたのとチガウ。

 

 

率直に言って、思い切り、怪訝な顔をされてしまった。

 

 

(どこから湧いてきた?????)的な。

 

 

しかし、私は遥々、「会いに来て」しまった手前、引き下がるに下がれない。

 

 

無理矢理、話をつづけたことで分かった事がある。

 

 

彼女は16歳(!)である

 

=単にお菓子大好き

 

=別に寂しいとか思ってなかった

 

=むしろ大きなお世話

 

 

オーマイガー

 

 

なんてこった。

 

 

16って聞いて、思わず

 

 

「若いね!!!?」

 

 

って言ったら、

 

 

「いや、あなたもね?」

 

 

って、なめんなよ、みたいな感じでムッと返されてしまった。

 

 

慌てて、「いやー私、英語、全然できなくて、なんかごめんねー」

 

 

って言ったら、

 

 

「うん、だから、ここに来てるんでしょ」

 

 

って、なおさら、ツンと返されてしまった。

 

 


 

 

 

 

ちなみに、私はクラス分けテストでB1.2だった。

 

 

Aがイエスとノーしか言えない人

 

 

Bがそこそこ

 

 

Cがネイティブ並み

 

 

で、それぞれA1、A2、A3と三つに分かれて、またさらにA1.1…と三つに分かれる。

 

 

まぁ、冴えないスタートだが、ぼちぼち、という感じ。

 

 

皆がテストを受け終わると、またウキ先生がやってきて、

 

 

「さぁ皆でお散歩しましょうーーーー!!!」だと。

 

 

まじで勘弁してほしい。

 

 

私のHPはすでにレッドゾーンに突入してるってのに。

 

 

私は昔から、コノ手の「ゾロゾロ皆で歩きましょう」みたいなのが大嫌いだ。

 

 

だって、嫌じゃん。

 

 

誰と歩くのか、とか、一人で歩いてると寂しいやつだな、とかさ。

 

 

こんなの中学、ぎりぎり高校で、もうオサラバだと思ってたのに。

 

 

もうこの時の私はすっかり元気をなくしていたから、もう誰にも話しかけなかった。

 

 

ぶすっと先生の後を一人でぶらぶらついていった。

 

 

皆、すっかり「お喋り相手」を確保して、楽しそうに歩いている。

 

 

「ボッチ」なのは、私と、もう一人冴えない日本人の男の子だけだった。

 

 

「あーこの『別に平気だし』って強がる感覚、昔よくあったなー」なんて。

 

 

ハタチで何やってんだって話なんですけどね。

 

 

例のイケイケ日本人オンナは相変わらず華麗にトークをキメてるし、

 

 

なんか日本人の女の子っぽい二人が並んで歩いてるのも見かけたけど、

 

 

意地になって、知らんふりした。

 

 

皆で学校の周りを散歩して、ウキ先生は近所のお菓子やさんで

 

 

「もーここのブラウニーが私を太らせるのよー」

 

 

なんて言いながら、ご主人から一切れもらって、つまんでいた。

 

 

実際、このお店は本当に素敵で、6週間で何回かブラウニーを買った。

 

 

 

ほら、素敵でしょ。

 

 

……って、写真を見せたかったんだけど、撮り損ねたらしい。

 

 

まだロンドンで勉強してる友達に写真を撮って送ってくれってSNSで頼んだら、

 

 

「いいよいいよー余裕だよー」って快諾したくせに、

 

 

案の定、忘れてくれちゃったらしく、

 

 

休日明けに学校行った時に、ちゃんと今度は撮るから!!!

 

 

って言ってたから、彼女が送ってくれたら、後で、ここに加えておきます。

 

 

しばしお待ちを。

 

 

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※送ってもらえました!(5/9現在)

 

 


 

 

 

やっと、お散歩が終わって解散になった時、時刻は昼過ぎだった。

 

 

うーん。へとへとだけど、家に帰るにはあまりに早い時間。

 

 

学校の中庭まで戻って来て、解散になったのだけど、

 

 

私はルームメイトの子を見つけ出して、聞いた。

 

 

「ちなみに、この後、何する、とか決めてたりする?」

 

 

さりげなーくね。

 

 

そしたら、

 

 

「友達と待ち合わせてゴハン食べるよ」ってさ。

 

 

あーーー

 

 

そうだよねーーーーー

 

 

やまいぬはどうするの?」って聞かれて、

 

 

「いや、うーん、

 

 

……ひとりで散歩する、かなぁ」

 

 

お通夜みたいな顔した私を見かねたのか、

 

 

「あ、じゃあさ、あの人たちにいれてもらえば?」

 

 

と言って示した集団は、

 

 

うおおおおお

 

 

さっきのイヤな女あああああ(が中心にできたっぽいグループ)

 

 

いやー、私、ほら、あれなの、シャイなの、人見知りで、だから、ちょっと無理かなーー

 

 

とか、もごもご焦って言い訳したら、

 

 

「大丈夫だよ。ほら、行っておいでよ。きっと楽しいよ」

 

 

うう。

 

 

これは行くしかなさそうな。

 

 

私はあんなに(内心)抵抗しまくってたボス女(これからそう呼ぶ)に、

 

 

頭を下げて言ったのだ。

 

 

「わたしも、いいいいいいっしょに、行っていい!?」

 

 

こんな屈辱あるもんか。くそう。

 

 

ボス女の「アラ」みたいな大きな目がイヤに覚えている。

 

 

その時は、「いっそ殺せえええ」くらいに思ってたけど、

 

 

後々、私は背中を押してくれたルームメイトに感謝する。

 

 

私がロンドンで一番仲良くなった女の子は、この中の一人だ。

 

 

もし、私がこの時、意地を張って、一人でお散歩していたら、

 

 

私は6週間をずっと一人で過ごしていたに違いない。

 

 

実際、さっき隣で同じく一人で歩いてた冴えない彼は、

 

 

見ると、いつも一人だった。

 

 

あ、途中から日本人の男子の友達ができてたっけな。

 

 

1回だけ、

 

 

「外国人の友達できた? 私、まだ仲良くなれなくて」

 

 

って話しかけたら、

 

 

「あーだめだめ。あいつら、何言ってるのか全然、分かんねーもん」

 

 

と、つまんなそうに言っていた。

 

 

私は、たまたま運が良かっただけだ。本当に。

 

 

 

 

 


 

さて、そのグループでランチしましょうということになった。

 

 

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内訳は、

 

 

(多分)イタリア人のお兄さん

(多分)イタリアかどこかの女の子

フランス人のお姉さん

台湾のお姉さん

韓国のお姉さん

スペイン語圏のどこかのお姉さん

日本人の女の子(私の一つ下)

ボス女(私の3つ上)

 

と、私の9人。なかなかの大所帯だ。

 

 

皆でぞろぞろ、感じの良いお店に入った。

 

 

通されたテーブルの真ん中にはデカいケチャップといかにも辛そうなソースが置いてあって、小さなお皿にトランプが一枚。

 

 

「これなんだろね」って誰かが言って、

 

 

「それきっと席番号だよ」

 

 

「なるほどね」って、また誰かが言った。

 

 

そこでおのおの、ハンバーガーを頼んだ。

 

 

あと、シェア用のポテト。

 

 

私ともう一人だけ、たぶん韓国の女の子がホットの紅茶も頼んだ。

 

 

ハンバーガーは出てくるのが、けっこう遅くて、

 

 

まぁ、私がそう感じただけなのかも知れないんだけど、

 

 

待っている間のお喋りがけっこう辛かった気がする。

 

 

写真の手前にいるのが、ボス女。

 

 

その隣の唯一男子、イタリア人のお兄さんはムードメーカー。おちゃらけ

 

 

その二人が中心に喋って、というか、

 

 

ボス女……って書くのも心苦しくなってきたから、

 

 

少しだけマイルドに、ボスさんにしよう。

 

 

ボスさんが、イタリアのお兄さんをいじって、隣の韓国と台湾のおしゃれ姉さんたちが笑う、盛り上がる、

 

 

みたいな感じだったような。

 

 

そうなんだ。テーブルは9人もいるから割と大きくて、

 

 

たまたまなのか何なのか、

 

 

お喋り上手の、盛り上げ上手が片側に集まってしまったから、

 

 

テーブルの反対側が静かになってしまった。

 

 

そうなんだ。私が座ってるほうは、静かだったんだ。

 

 

私の隣に日本人の女の子が座ったんだけど、

 

 

「日本人とは喋らない」

 

 

っていうバリアをお互い張ってたから、全然喋らなかった。

 

 

とにかく「何とかせにゃあ」と気ははやるも、うまくいかなくて。

 

 

今、思うと、それは何もテーブルのこちら側だけではなかったらしい。

 

 

皆、少しづつ、ちょっとづつ、困ってたし、頑張ってたんだろう。

 

 

だから、何か、「ネタ」というか、会話の種を見つけると、

 

 

何気なく、さりげなく、でも、逃さず、すかさず、言葉にした。

 

 

卓上のトランプも。見るからに辛そうなソースも。

 

 

なんか、そういうゲームみたいだなぁって思った。

 

 

勝ちとか負けとか、よく分からないけどさ。

 

 

私は勝てないのは重々承知で、

 

 

でも「負けてませんよ、全然、負けてはいないんだけどね、惜しいね」

 

 

みたいなのを、誰かに、審判みたいな人に、

 

 

言ってほしかったんじゃないかと。

 

 

自分では、そう思ってた。

 

 

諦めて黙ってしまえば、それは負けだ、

 

 

そんなみじめなこと、してたまるかってさ。

 

 

こなれたように、へっちゃらなように、カジュアルに。

 

 

フランス人の女の子のスマホの画面がバキバキだったから、

 

 

それを言葉にした。

 

 

会話、すぐ終わっちゃったけど。

 

 

ソースも、

 

 

「えー辛いよー」

 

 

って、皆と同じように大げさに顔をしかめてから、

 

 

「あれ、本当だ。イケるイケる」って。

 

 

面白いのは、皆が大なり小なり同じ心持ちだったから、「会話のネタ」が

巡回することだ。

 

 

あっちがソースの話をして、こっちがスマホの話をして、

 

 

一通り終わると、バトンタッチ。

 

 

「はーい、入れ替えますよー、皆さん、ついてきてますかー」みたいなさ。

 

 

また、だいたい同じくだりをお互い反対側で繰り返して、

 

 

それはちょっと奇妙だったけど、

 

 

皆がこのゲームにそこそこ真剣だったから、馬鹿にするやつはいなかった。

 

 

ちなみに、ハンバーガーはめちゃめちゃおいしかった。

 

 

あー、今、写真を探したけど、撮ってなかった。

 

 

それどころじゃなかったんだな。

 

 

ちゃんとした、ハンバーガーってこんなにウマいんだなって、

 

 

ちゃっかり、しっかり、ウマいモンはウマいと思うわけで。

 

 

一人で「うめぇ」「うめぇ」って地味に興奮してがっついてたら、

 

 

はす向かいの台湾の美人さんが、

 

 

お上品にハンバーガーをナイフで切り分けて、

 

 

手をいっさい使わずに召し上がってたから、

 

 

やっちまったなぁ、と。

 

 

もう食べちゃったんだけどさ。すでに。美味しかったよ、おかげさまで。

 

 

隣のイタリアの女の子が黙々とピクルスやらマッシュルームやら抜いてたから、それも

勿論「言葉」にしたんだけど、

 

 

そういや、あの大きなマッシュルームの話も「巡回」してたなぁ。

 

 

「何で抜いてるの?嫌いなの?」

 

 

「うん。嫌い」

 

 

「じゃあ、何でマッシュルームバーガー選んだの」

 

 

「こんなにマッシュルームが大きいと思わなくて」

 

 

「なるほどね」

 

 

私、一歩「リード」したくて、

 

 

大して好きでもないし、むしろ苦手だったけど、

 

 

「じゃあ、私が食べてもいい?」

 

 

って、内心「ウエー」って思いながら、その特大マッシュルームを食べたりなんかもした。

 

 

どうせ同じこと話すなら、皆で話せばいいんだけど、そうもいかずに

 

 

若干のタイムラグを経て、ネタの交代。

 

 

トランプのカードを回収して配り直す、みたいな。

 

 

ハンバーガーもやたら美味しかったんだけど、ポテトがまた、やたらめったら美味しくて、

 

 

シェアのポテトをこっそり、パクパクずっと食べてた。

 

 

あのチーズかかってたやつ、何であんな美味しいんだろうな。

 

 

この時点で、まだ誰の名前も、国籍も、よく分かっていなかった。

 

 

それは私だけではなく。

 

 

誰かが、たぶん、台湾の美人さんが

 

 

「皆の名前をここに書いて」って、

 

 

スマホのメモを回した。

 

 

「えーこれ、写メっていい?」

 

 

「あー私も」

 

 

なるほどなるほど。

 

 

私もそこに自分の名前を記入して、写真を撮らせてもらった。

 

 

でも、見知らぬ名前の並んだ画面は、やっぱり他人行儀で、

 

 

読み方も、そもそも誰がどの名前かも、結局よく分かんなかった。

 

 

「私の名前、必要とされてるんだろうか」なんて、いじけた事を考えながら、

 

 

ローマ字で書かれた自分の名前を見つめた。

 

 

実際、最初の一週間は誰からも(先生を除いて)私の名前を呼ばれなくて、

 

 

高1の時、2週間だけ行ったオーストラリアのホームステイでは

 

 

毎日毎日、不思議なイントネーションで名前を呼ばれてたのになぁ、

 

 

って、悲しかった。

 

 

ちなみにちなみに、私はこの日から、憑かれたように

 

 

「外国のハンバーガー」の虜になり、

 

 

一人で暇なときは、美味しいハンバーガー屋さんを探してさすらった。

 

 

そう。あの日、食べた、あのハンバーガー。

 

 

悲しいかな、私は病的な方向音痴で、あの日、皆に連れてってもらったハンバーガー屋さんは、学校からそんなに遠くないにも関わらず、

 

 

その後、一回しかたどり着けなかった。

 

 

一回だけ、適当に歩いて、迷子になったら、まぐれでたどり着いた。

 

 

でも不思議なことに、一人でのびのび快適に食べたら、

 

 

あの日ほどの感動は無かった。

 

 

美味しいは、美味しいんだけど。

 

 

一人だと、すぐ食べ終ってしまうし。

 

 

なんとも、うまくいかないものだ。本当に。変なの。

 

 

1人で食事すると、

 

 

「マダム」とか「レディー」とか

 

 

店員さんに、ちやほやしてもらえるのは、楽しいんだけどね。

 

 

 


 

 

 

今日はロンドン2日目、前半戦のお話でした。

 

 

続きは、また今度。

 

 

やまいぬでしたʕ ・(エ)・ʔ

 

 

 


 

 

 

あの日 食べたハンバーガーも

あの時 泣いたレミゼラブルも

いつか君と もう一度

それが 私の小さな夢です